藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

一人の世界に。

居酒屋の重鎮太田さんの記事より。
結局趣味の問題なのか。
囲碁将棋、ゴルフにカラオケ、スポーツ観戦、アニメに映画、旅行、ギャンブル系。
そして酒。

年をとると「どこにハマらないか」ということは実に重要で、でも全くどれにもハマらないというのもつまらない。

要は貴重な余生を何に使うのか、を試されているようなものだ。
自分は酒以外には奇跡的にハマらなかったけれど、最後の酒にはまっている。

人生が二十年ごとの節目だとしたら、最後の二十年は是非とも端然と過ごしたい。

居酒屋は確かに人の器を見ます。だからいいんです。客はそこで器量を磨く。

器量を磨く。
確かに一人で居酒屋にいるとそこには「自分単体」しかいない。
肩書きも何もない。
「素に戻る一時」を作るというためなら、居酒屋通いは許されるのかもしれない。

いい年になったら「行きつけ」の居酒屋を持て

かつて化粧品広告のアートディレクターとして名を馳せた著者は、今や全国各地の“いい居酒屋”を巡り発信する第一人者。一人居酒屋飲みの至福とは。『酒と人生の一人作法』を書いた居酒屋探訪家の太田和彦氏に聞いた。
かつて化粧品広告のアートディレクターとして名を馳せた著者は、今や全国各地の“いい居酒屋”を巡り発信する第一人者。一人居酒屋飲みの至福とは。『酒と人生の一人作法』を書いた居酒屋探訪家の氏に聞いた。

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■人生は20年ごとに節目が訪れる

──だしから取って昼支度、原稿書きは筆が乗っても30分で中断し、レコードに針を落として気分転換。晩酌も一人気ままに一杯。満ち足りた光景が目に浮かびました。

僕が思うのは人生20年節目説。大学出て就職する22、23歳までが成長期。僕は23歳で会社組織に入り、43歳で独立した。いっときデザインを教えていた大学も62歳で退職。だからほぼ20年間隔。
 春夏秋冬にたとえれば、成長期が春、いちばん元気がいい会社勤め時代が夏、そして秋に1人になった。20年×4周=80年として、今72歳は最後の冬の時期の真ん中にいるな、というとこ。

──“人生の冬”なんて、何だか寂しい響きですが。

冬っていいものですよ、気持ちが落ち着いて。最近は老後の生き方を説く指南本が山のように出てますよね。この本は、これまで書いた原稿の中から選んで編集しました。そうしたら、60歳以降に書いたものがありありと、指南書代わりの答えになっていた。
 リタイアして、友人に「さあこれから遊ぼうよ」と言っても、半年も経てば音信不通になります。周りから人がどんどん去っていく。僕がアドバイスしたいのは、1番に、迷わず居酒屋に行け。2番に、1人旅をしろ。要するに1人で生活することの楽しさを知る。

──秋後半の50代になると冬が目前に見えてきて、今のうちから仕事以外の何かを見つけなきゃ、趣味は?  ボランティアは?  と焦りだす人、結構多いと思います。

50代はいちばん悩みの時期ですよ。以前、「生涯飲酒計画」というのを書いたんです。夢、野心、自負、不安、孤独の20代は「熱血の酒」。最盛期の30代は「仕事の酒」、仕事に猛進してきた毎日を一段落させたくなる40代は「親交の酒」。そして50代は「孤独の酒」。
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11/25(日) 15:00配信
 サラリーマンならば定年、子どももそろそろ結婚。ふと気がつけば、自分を取り巻いてた人々、環境がすべて去り、古女房と2人取り残されている。否応なく人生のむなしさに直面させられ、精神的に非常に不安定になる。頼りは酒だが、その味は苦く酔いも早い。

■60代、70代のお酒は…

60代になると、危機を乗り越え客観的に自分の人生を見いだす「悟達の酒」。そして僕は70代、頼りにされ気も引き締まるが、張り合いもある。酒とはいいものだとしみじみ思う「滋味の酒」……。これ、40代前半で予想して書いたんです。それが実に当たってた(笑)。
 1人で行くのに居酒屋ほどいいところはなくて、お酒と一品ぐらい置いとけば長居していいわけです。1人になると自分を考える。1人でいることに耐える練習にもなる。

うなぎ屋とかレストランだと、食べ終わってじっと座ってたら「何か?」と聞かれるし、家だと「どうしたの?」と言われる。居酒屋だといろいろ考えてるうちに、酒の力で無の境地になる。そこで浮かんでくるのはただ1つ、「次、何注文しようかな」。それがいいんです。群衆の中の孤独を楽しむ。
 ──いい居酒屋の外観って、何か特徴あるんですか? 

ありますよ。一軒家で2階が住居とか、家族経営らしい小さな店。5時開店に4時半から常連が来ちゃうような店は必ずいい店です。その土地で何年にもわたって商売を続けてきたというのは、信用の置ける証拠だから、あざとい商売をしない。しかも安くてうまいから毎日でも行ける。

そういう店に入るともう安心。ネットのグルメサイトなど当てにならないので、昼間自分の足で街を歩いておくことですね。夕方早い時間から仕込みをやってるところ。外に花や植木があって水やりしたり、打ち水したり、そういうところはいいですね。
 僕にとってのいい居酒屋は、40代は“いい酒、いい人、いい肴”だった。今は基本的な仕事をちゃんとしてくれれば、もう珍しい肴とか料理の技とかどうでもよくなった。居心地がいちばん。居心地とは店の主人と客筋。主人と客が長年かけて培ってきた、その店独特の風格。そこに自分も交ぜてもらう。

──いい歳になったら行きつけの居酒屋を持て、と。

まあ場数と経験は必要です。女性なら女将(おかみ)さんのいる店に行けばいい。あるいは主人と奥さん。女将さんは必ず1人客の女性を大事にしますよ。見慣れない女性が1人で来ると、「こっちいらっしゃい、さあどうぞ」と言ってくれる。最近は女性の1人飲みをよく見かけますね。姿勢よくカッコよく飲んでる姿は、見ていていいもんですよ。ほかの男客も茶々入れないし。
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11/25(日) 15:00配信
 誰かと話をしたければ、店主に限るね。店のご主人や女将さんは客相手に慣れてるから、余計なこと聞いてこないし、表面的な会話でいい。京都の店が優れてるのはそこ。上辺だけってことをとても大事にするから。居酒屋のカウンターで本音吐いてる客は、野暮なお人や、って相手にされない。

──お客側の器もいる気がする。上級者でないと難しいのでは? 

居酒屋は確かに人の器を見ます。だからいいんです。客はそこで器量を磨く。でもそれは難しいことじゃなくて、要は静かに端然と、おとなしく飲んで、サッときれいに勘定して帰ればいい。最初は話をしようなんて思わず、ごあいさつ程度。いい店だな、自分と馬が合うなと思ったらまた行って、3回も通えば常連。きれいに飲んで帰る人と覚えててくれるから、向こうも安心、こっちも安心。「はい、いらっしゃい!  こちらのお席でしたよね」と案内してくれますよ。
 ──読者に味わってほしい点は? 

酒が人間を創る、だな。無理して言えばね。「自分の人生、これでよかったんだろうか」と立ちすくんでいるような方に、読んでいただけたらうれしい。自分を知るためには1人になるのがいちばん。1人の時間を持つには、居酒屋ほどよい場所はないということです。自分を見つめる、向き合うことに慣れてしまうと、生きてるって楽しいことだなって必ず気づきますよ。

50代以降は得るものより失うものが多くなる、って嘆きも聞くけど、失うものが多いほうがいいんです、楽になるから。裸一貫、身一つの心地よさ。酒ってうまい、人生って面白いものだなって。得るものはない、ただ深まっていくだけ。仙人のように生きると楽ですぞ。
中村 陽子