藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

リスクを踏み越えて

*[ウェブ進化論]支配される側になる。
日経より。
ウェブカメラが子育てや見守りを劇的に助けているという。
なるほど今風な育児の方法だ。
一方いわゆる「データ活用とプライバシーの問題」も昨今話題になっている。
あらゆる情報はもうデジタルネットワークと無縁ではいられないから、どうやって匿名化するのか?という課題はこれからさらに白熱するだろう。
自分は結論的には「必ず便利がリスクを凌駕する」と思う。
それほど自分たちは"易きに流れる生き物"なのだ。
どれだけリスクがあったって、もうスマホなしには戻れない。
(それどころか、先日i-Phoneのバッテリー交換待ちの数時間は自己喪失感すら感じた。家族や会社の電話番号やメルアドすら覚えていないのに気づいたのだ)
 
反対に。それこそビッグデータがもたらしてくれるだろう恩恵は、今のかなりおバカなAIスピーカーどころではないだろう。
そのうちにものすごく賢くなって、ひょっとしたら一番の友達はAlexaになるかもしれない。
プライバシーの問題すらAIが落とし所を見つけてくれるのではないだろうか。
 
過去の時代を振り返っても、交通事故が起きるから車を廃止する、という方向に話は向かない。
環境が悪くなるからといっても発電所は無くならない。
ましてや個人のプライバシーなんて、軽く流されて自分たちはネットの支配下で便利に暮らすことになるだろう。
ワタシ個人としてはそれで結構だと思っていますけれど。
 
 
リスクと利便性の天秤
2019年5月19日 19:30
5月12日の母の日、皆さまはどのような一日を過ごしただろうか。我が家でも妻が母となったので、本稿執筆時点で私も例年と異なる気持ちでそれを迎えようとしている。
マネーフォワード取締役兼Fintech研究所長。野村証券で家計行動、年金制度などを研究。スタンフォード大学経営大学院、野村ホールディングスの企画部門を経て、2012年にマネーフォワードの設立に参画。
娘の誕生直後の昨年7月26日、本コラムで「瀧家は今、戦場である」という書き出しを用いた。それから10カ月、戦場という表現はやや遠のいたが、引き続き育児は兵たんと心理戦の組み合わせであると感じる。必要な物資や時間が確保されていれば良いのだが、多くの不測事態が睡眠や準備の不足を呼び、冷静な判断を困難にしていく。我が家の非常事態宣言は10連休の間も当然続いた。
だが、昨年から心理戦を有利な方向へと導いてくれているのは、米国から入手したクラウド型暗視カメラである。ベビーベッドの上に設置されたカメラは、動画を中継するのみならず、アルゴリズムを用いて入眠や起床のタイミング、さらには呼吸頻度をも自動検知し、スマートフォンにプッシュ通知を送れるサービスとなっている。
赤ちゃんの部屋まで忍び足で見に行く必要がなく、寝相も含めた危険を察知し、必要な時だけ注意をすることで、親は人間らしさを取り戻し、一杯の落ち着いたワインにたどり着くことができる。就寝中のダイジェスト動画がかわいいというのもある(むしろ、これが本命かもしれない)。このことで、我が家は大いに心の余裕を取り戻した。
このサービスでは、多数の赤ちゃんの動画がサービス提供者に提供されることで、分析の精度が高まるフィードバックループがある。一方でプライバシーの観点では、アップロードされた動画を、例えば広告配信や、第三者に提供されるなど、ユーザーが意図しない形で利用されることについては、強い懸念があるのも事実である。
4月末にフェイスブック社が開催した開発者向けカンファレンスF8でも、この話題は取り上げられた。同社が昨年から提供している通話端末のカメラは、カメラが人物の方向を向く機能を備えている。
その際、顔を認識する解析はクラウド上ではなく端末内で行われることで、クラウド上で不要な動画データを利用されずに済む設計となっている。F8では同社CTOがこの機能を提供するために数年間の研究開発が必要だったことを述べており、同社が決してプライバシーを軽視していない姿勢の表れとしてプレゼンしている。
何となしに思うのは、一つしか選べないとするならば、どちらが望ましい技術の形なのだろうか、という点だ。赤ちゃんの安全のためであれば、ある程度プライバシーが犠牲になっても、呼吸や事故のアラートは、機械学習してもらって、より精度高く受け取りたい。一方で、赤ちゃんや家庭内の動画が万が一にも悪用されるのには耐えられない。そのような、利便性とリスクの天秤(てんびん)に、データの利活用の軸はかけられている。
日本でも個人情報保護法の改定議論を機に、データの利用に関する議論は二分化する様相をみせている。データの保護を尽くしたあとの天秤の存在については、偏りがない議論がなされることがまた適切だと思う。
日経産業新聞2019年5月16日付]