藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

インフラの価値を問う

*[国と政治]税金こそ疑うべき。
ソフトバンクグループの再編で「節税」が話題になった。
組織再編にともなうヤフー株式の売却代金が税法上の規定で「みなし配当」に該当し、その大半が「益金不算入」となったことによる納税額の大幅削減です。
とのことだが、論点は「再編が合理的か、むしろ節税目的ではないか」ということらしい。
で、それはともかく。
 
国の税金は「いわゆる法律とか行政とか諸々の基礎としてのインフラ」を提供するコスト」ということらしい。
そこで重要なことがこれだ。
国家は本当に価値あるインフラを最小のコスト(税金)で提供できているのかどうかを自問する必要があるのではないでしょうか。
全企業・全国民が節税を行っていけば、国庫に入る税収は低下し、政府自体もリストラを行う必要が出てきます。
その結果、企業・国民が希望する水準のインフラの提供が困難になれば、企業・国民が納得する範囲内で増税すればよいでしょう。
今の政治と行政では、全てがツギハギで道路一つにせよ、建築規制にせよ、各種補助金にせよ、もう「何が必要で何がコストか」がさっぱり分からない。
自分たちが「仕事をしたり生活したりする上での必要なコストかどうか?」ということがさっぱり見えないから税金に対する理解が進まない。行政は行政で「決まりですから」と言うばかりで自らを考える力がない。
これからの政治と行政は「税金の透明化」に力を注ぎ、インフラとして必要なものと、廃止して節減すべきものを明らかにしていく必要があると思う。 
やれ税金はけしからん、というのは1,000年も前から「統べる側」が言われてきた悪口だ。
それを払拭してこそこれからの政治ではないだろうか。
 
ソフトバンクGのヤフー再編、節税と脱税の境目は?
2019年7月12日 5:30
ソフトバンクグループが実施した、子会社のヤフーをめぐるグループ内資本再編で、巨額節税の手法が耳目を集めました。専門家の間でも評価は分かれています。節税とは何か、どのようなメリットがあるのか、そもそも税金とは何か。グロービス経営大学院の斎藤忠久教授が、ビジネススクールで学ぶスキル「節税効果」の観点から解説します。
【関連記事】ソフトバンクG ヤフー再編で税メリット

借入金の提供者・国家・株主

企業経営者の最大の目的は、その企業価値を最大化し、その結果として株主に報いることにあるとされています。企業は、投資家(株式に投資する株主、そして借入金の提供者)から調達した資金を活用した事業活動を通じて付加価値を生み出していきます。ここで、資本提供者とは、プロの投資家(機関投資家や銀行等)に限りません。個人企業であれば、オーナーは株主であり、借入金の提供者でもありえます。個人は企業の株式を購入することで株主になり、また、銀行に預金を預けることを通じて間接的に借入金を企業に提供していることになります。
したがって、生み出された付加価値は、そのもととなる資金を提供した投資家のものではありますが、事業活動にあたって国家が提供するインフラ(ここでは、道路といったハードだけでなく、法律や文化といったソフト面も含む、国家が提供する幅広いサービスをいう)を利用していることから、その利用料として、生み出された付加価値の一部を「税金」として国家に納付することになります。
「企業の生み出す付加価値の総額=借入金の提供者の取り分+国家の取り分(=税金)+株主の取り分」
ということになり、その取り分の優先順位は、法律の定めにしたがって、「借入金の提供者」、「国家」そして「株主」の順番となります。企業価値とは、「借入金の提供者」そして「株主」に帰属する価値であることから、企業価値を最大化するためには「国家」の取り分である税金を最小化する必要があるのです。企業が持つ資産の生み出す価値、税金そして企業価値の関係を図で見てみましょう。
企業が持つ資産が生み出す付加価値の総額を仮に4000億円とします。税金がない世界では、税金としての外部流出がないため、投資家全体(借入金の提供者+株主)が受け取る価値は4000億円となります。ところが、我々が住んでいる税金のある世界になると様相が一変します。借入金があるとないとでは、企業価値が大きく変化するのです。これは、資産が生み出した価値の一部が税金として外部流出することから、企業価値が減少するためです。したがって、企業価値を最大化するためには税金として外部流出する金額を最小化すれば良いことになります(つまり、節税を行う)。借入金の導入はその一策です(借入金の支払利息の節税効果)。

税金は、収益から各種の費用を差し引いた後に残る利益(課税所得)に対して一定の率(税率)で課されます。したがって、税額を削減するには、「課税所得を削減する」もしくは「税率を下げる」の2つの方法しかありません。「税率」は各国の税法によって定められているので、企業として勝手に下げることはできません。このため、世界を舞台に事業を展開している企業では、経費は税率の高い国で支出し、利益は税率の低い国に集中することで企業全体としての税率を下げようとしています(一例として、医薬品メーカーには、研究開発は税率の高い米国で、営業活動は税率の低いアイルランドで行う企業が多い)。一方、課税所得を削減する方法としては、税法の規定で(投資を奨励することを主目的として)各種の税優遇策が提供されています。

行為の背景にある「意図」が基準

さて、今回のソフトバンクグループの組織再編で活用されたのは、組織再編にともなうヤフー株式の売却代金が税法上の規定で「みなし配当」に該当し、その大半が「益金不算入」となったことによる納税額の大幅削減です。税法の規定には沿った処理ですが、最終的にはその組織再編が、経済合理性のある再編か、それとも節税のみを目的にした再編かどうかが、節税か脱税かの判定の分かれ目となります。
脱税は明らかに法律違反ですが、節税は法律の規定内である限りは容認されるべきものでしょう。ただし、時代の変化とともに法律策定時には想定できなかった状況も起きます。脱税と節税の境目は必ずしも明確ではないですが、最終的には、その行為の背景にある「意図」が判定基準となります。立法の趣旨に反する事例が多くなってきた(良識ある国民の感情の総意として)場合には、法律の規定が時代に即さなくなってきているということで、改定されるべきでしょう。
ところで、税金は「企業活動の結果うみだされた付加価値のうち、国家がそのインフラを提供する対価として配分にあずかるものである」と考えられます。すると節税とは、インフラ利用料を引き下げることによって、付加価値を国家から一私企業へ移転させることと同義と考えることもできます。合法的とはいえ、「国に上納すべき税金」を意図的に削減(節税)して、付加価値を一方的に移転させることはけしからん、という国民感情は残るかもしれません。
しかし、その前に、国家は本当に価値あるインフラを最小のコスト(税金)で提供できているのかどうかを自問する必要があるのではないでしょうか。全企業・全国民が節税を行っていけば、国庫に入る税収は低下し、政府自体もリストラを行う必要が出てきます。その結果、企業・国民が希望する水準のインフラの提供が困難になれば、企業・国民が納得する範囲内で増税すればよいでしょう。税制とは、国家・企業・国民が最適に機能できるよう、民間部門と国家(インフラ部門)の価値配分を規定する重要な政策なのです。
「節税効果」についてもっと知りたい方はこちらhttps://hodai.globis.co.jp/courses/391227b5(「グロービス学び放題」のサイトに飛びます)
さいとう・ただひさ
グロービス経営大学院教授。銀行からコンサルティングファームに出向、マーケティングおよび戦略コンサルティングに従事。その後、音響機器メーカーの取締役CFOそして米国持ち株子会社の副社長兼CFO、米国通信系ベンチャーの日本法人代表取締役社長、エンターテインメント系ベンチャーの専務取締役、東証1部上場モバイル向けコンテンツ配信企業の取締役兼執行役員専務CFOを歴任。
本コンテンツの無断転載、配信、共有利用を禁止します。

考える力(2)

*[次の世代に]素直に私の道をゆく。
先日、15年ぶりに再会した弁護士の友人との会話。
「そういえばMBA留学していたけどどうだった?」
「いやー、取ってはみたもののねぇ。それより去年行った東アジア旅行の方がよほど役に立ったよ」
「へぇ。どうして?」
「これから彼らは「最短の方法で発展することを考えている」からね。余計な手順は必要ないからね。MBAは関係ないと思うよ」
日経の記事にある東大卒外科医が興したベンチャー企業の話にも共通する。
順当に出世すれば、まさに「白い巨塔」の主になれる特別な立場だ。
この「順当に」という安定というか、既定路線の観念がクセ者だ。
順当に行けば、そんなに波乱万丈なく「いい地位」になれるよ。
ということが若者を縛っていた時代は終わる。
むしろ波乱万丈でなく、安定した将来がどれほどの魅力があるのか。
そんな風に若者が目覚めつつある。
平成の「失われた30年」はそんな覚醒のためのリハビリの時代だったのではないだろうか。
これからの若者が楽しみだし、まだまだ50代以上だって負けてはいられない、と思うのだ。

開成・東大卒の脳外科医 なぜベンチャーに メドレー代表取締役 豊田剛一郎氏

 
 
 
2017/1/10

医療ベンチャー、メドレー(東京・港)の代表取締役の豊田剛一郎氏(31)。日本医学界の最高峰、東京大学医学部卒の脳外科医だったが、エリート医師の道を捨て、コンサルタントを経てベンチャービジネスの世界に入った。しかもメドレーには東大医学部の同窓生4人のほか、企業や医療現場で活躍する有能な人材を次々誘い、「スーパー頭脳集団」をつくり上げた。豊田氏は起業家に転身し、何をやろうとしているのか。
豊田氏は私立開成高校(東京・荒川)から東大理科三類に合格して医学部に進学。聖隷浜松病院浜松市)、NTT東日本関東病院(東京・品川)など国内有数の中核病院で脳外科医として腕を磨いた。米国の名門病院にも勤務し、誰しもが認めるエリート医師となった。
■日本の医療現場は非効率的
だが「日本の医療界は危うい。崩壊するのではないか」という強烈な危機意識を持つようになった。国民医療費が年間40兆円に膨らむなか、いつまで国は財政負担できるのか、「国民皆保険」は維持できるのか――。「海外に比べて医療・保健に対する1人ひとりの意識があまりにも希薄なのではないか」と指摘する。
そんなマクロ的な問題以上に「医療現場は非効率的すぎる。救急病院の認可を得るため、都内に毎晩何百人という脳外科医が当直しているが、実際は大半の医師が必要とされていない。一方で地方では医師不足が深刻。医療現場は規制でがんじがらめ、矛盾だらけで、とにかく効率性に欠く」。先輩医師にそう問うと、誰もがその通りだという。ただ「とはいえ患者と向き合うのが医師の第一優先 」と問題解決には消極的だ。
しかし、豊田氏は耐えられなくなった。日本最難関の東大理三に合格した豊田氏は「常に最小限の努力で最大限の効果を出す、勉強の効率性を追求してきたのに、医療界は非効率でいいのか。患者さんにとっても医者にとってもいいことではない」。
■ネットで開成の同級生と再会

メドレー創業者で社長の瀧口浩平
そんな時、フェイスブック上で昔の同級生と再会した。メドレー創業者で現社長の瀧口浩平氏だ。「いわゆる塾友ですね」。2人が知り合ったのは小学校の進学塾。ともに開成中学に合格したが、瀧口氏とは音信不通になった。同中学を突然やめ、高校は国立の名門進学校東京学芸大学付属高校に進学したからだ。
瀧口氏は独自路線を歩む。高校3年生の時、今後の進路を検討するなかで大学進学よりも事業に関心を持ち、17歳の時に起業し、大学には進学しなかった。その後、メドレーを設立し、医療介護の求人サービスを開始した。2人は医師と起業家と全く別の道を選んだが、ネット上で再会、「もっと患者も医師も納得できる医療を目指すべきだ」という点で意気投合した。
豊田氏は米国から帰国後、「一度、病院の外から医療界を見てみたい」とマッキンゼー・アンド・カンパニーにヘルスケアのコンサルタントとして転身した。そのころ瀧口氏は、求人事業が軌道に乗り、さらに医療に切り込むサービスの開発を検討していた。そのためには「医療の専門知識を持つ立場から事業を支える存在が必要だ」と考え、豊田氏に共同代表とならないかという話を持ちかけた。そして豊田氏は、「瀧口と話して第2の創業をしようと」決意し、2015年2月にメドレーの代表取締役に就任し、共同の経営者となったのだ。
「医療の課題を解決する様々なサービスを提供するのが目的です。起業家になりたかったのではなく、医療の世界を変えたい、効率化したいから挑戦しました。失敗したら、また医者に戻ればいいという甘い気持ちで挑んでいない」と豊田氏は話す。わずか1年余りの間に、周囲で同じ理念を持つ人材を次々にメドレーに誘った。そして相次いで新規事業を立ち上げた。
DeNAとは違う
まず、オンライン病気事典「MEDLEY」という医療メディアを立ち上げた。1400以上の病気情報のほか、約3万点の医薬品や約16万件の医療機関情報を集約。約500人の医師とのネットワークを構築し、医療情報を日々更新している。
ディー・エヌ・エーDeNA)の医療情報サイトのコンテンツの信頼性が問われ、社会問題化したが、豊田氏は「正確な医療情報を提供するのは極めて困難です。明確なエビデンス(証拠)が必要ですし、世界の医療情報は日々更新されていきます。医師によっても治療に対する考え方に違いがある。ある有名なサイトの医療情報は90%に間違いがあるとの指摘もあります 」という。
しかし、メドレーは多くの医師とつながっているだけでなく、社内に複数の医師を抱えている。「正確で客観性の高い医療情報を提供できる。そこが最大の我々の強みです」と強調する。
さらにメドレーは、医療機関の遠隔診療を支援する、オンライン通院システムのソリューション販売も開始。病院向けのビジネスを本格化している。この2つのサービスを支える人材は、東大医学部の同級生と後輩だという。両者とも医者としても有能な人材だ。「大学のなかでも2人ともすごく能力のある男たちだった。僕と同じような問題意識を持っていた」と豊田氏はいう。
■「東大・開成人脈」をフル活用

開成中学・高校(東京・荒川)
日本の医学界の頂点に君臨する東大医学部。その卒業生は東大以外にも他の医学部の教授や大規模病院の幹部医師として迎えられるケースが多い。順当に出世すれば、まさに「白い巨塔」の主になれる特別な立場だ。
そんな「金の卵」たちが簡単に起業に走ると思えないが、豊田氏は「東大の医学生の親が医師というのは比較的少ない。医学領域の研究や医療にこだわっている人は少なくないが、医者という職業そのものに固執する人は意外と少ないかもしれない」と話す。
ほかにも豊田氏は法務統括責任者に東大法学部出身の弁護士、東大工卒でJPモルガン証券の出身者を最高財務責任者CFO)にそれぞれ迎え入れた。両者とも開成の同級生らだ。
メドレーの社員はまだ115人。第2の創業から1年余りで、「業績の数字は未公表」という企業規模だ。しかし、その幹部人材は東大や一橋大学早稲田大学卒の人材がひしめく。グーグル、リクルートなどの企業で活躍したキャリアを持つ社員も多い。一昔前であれば、ベンチャー企業の経営には参加しなかった面々だろう。
「僕がなぜ医者をやめたのか、周囲の人間も徐々に理解してくれるようになりました。我々はお金もうけ以上に、医療を通じて社会に貢献したい。本気です」と強調する豊田氏。スーパー頭脳集団、メドレーは日本の医療を変えるのだろうか。
(代慶達也)

考える力(1)

 
*[次の世代に]自分の価値観を持つ。
東大医学部出身の脳外科医と、大学に進まず起業で成功した「開成塾友」の二人が医療情報提供の会社「MEDLEY」を立ち上げたという。
その理由が重要だ。
だが「日本の医療界は危うい。
崩壊するのではないか」という強烈な危機意識を持つようになった。
国民医療費が年間40兆円に膨らむなか、いつまで国は財政負担できるのか、「国民皆保険」は維持できるのか――。
「海外に比べて医療・保健に対する1人ひとりの意識があまりにも希薄なのではないか」と指摘する。
(中略)
2人は医師と起業家と全く別の道を選んだが、ネット上で再会、「もっと患者も医師も納得できる医療を目指すべきだ」という点で意気投合した。
こうした「バイアスに捉われないまともな思考」と「自分の意思」を素直に行動に移せることが、これからの若者の特権だ。
というか昭和の高度成長期と"失われた平成"を経て、ようやく日本人のメンタルも毒が抜けてきたのだと思う。
既存の教育や競争社会で優秀な人ほど「そこから抜ける」ことに怯えるようになる。
「過去の成功体験に縛られる」という奴だ。
 
自分のように成功体験のあまりない人はまだましだが、むしろエリートと呼ばれるような人には聞いてもらいたい。
もっと自分の思う通りに動いていいのだと。
しかも早く、若いうちに行動しよう、と。
(つづく)
 

開成・東大卒の脳外科医 なぜベンチャーに メドレー代表取締役 豊田剛一郎氏

 
 
 
2017/1/10

医療ベンチャー、メドレー(東京・港)の代表取締役の豊田剛一郎氏(31)。日本医学界の最高峰、東京大学医学部卒の脳外科医だったが、エリート医師の道を捨て、コンサルタントを経てベンチャービジネスの世界に入った。しかもメドレーには東大医学部の同窓生4人のほか、企業や医療現場で活躍する有能な人材を次々誘い、「スーパー頭脳集団」をつくり上げた。豊田氏は起業家に転身し、何をやろうとしているのか。
豊田氏は私立開成高校(東京・荒川)から東大理科三類に合格して医学部に進学。聖隷浜松病院浜松市)、NTT東日本関東病院(東京・品川)など国内有数の中核病院で脳外科医として腕を磨いた。米国の名門病院にも勤務し、誰しもが認めるエリート医師となった。
■日本の医療現場は非効率的
だが「日本の医療界は危うい。崩壊するのではないか」という強烈な危機意識を持つようになった。国民医療費が年間40兆円に膨らむなか、いつまで国は財政負担できるのか、「国民皆保険」は維持できるのか――。「海外に比べて医療・保健に対する1人ひとりの意識があまりにも希薄なのではないか」と指摘する。
そんなマクロ的な問題以上に「医療現場は非効率的すぎる。救急病院の認可を得るため、都内に毎晩何百人という脳外科医が当直しているが、実際は大半の医師が必要とされていない。一方で地方では医師不足が深刻。医療現場は規制でがんじがらめ、矛盾だらけで、とにかく効率性に欠く」。先輩医師にそう問うと、誰もがその通りだという。ただ「とはいえ患者と向き合うのが医師の第一優先 」と問題解決には消極的だ。
しかし、豊田氏は耐えられなくなった。日本最難関の東大理三に合格した豊田氏は「常に最小限の努力で最大限の効果を出す、勉強の効率性を追求してきたのに、医療界は非効率でいいのか。患者さんにとっても医者にとってもいいことではない」。
■ネットで開成の同級生と再会

メドレー創業者で社長の瀧口浩平
そんな時、フェイスブック上で昔の同級生と再会した。メドレー創業者で現社長の瀧口浩平氏だ。「いわゆる塾友ですね」。2人が知り合ったのは小学校の進学塾。ともに開成中学に合格したが、瀧口氏とは音信不通になった。同中学を突然やめ、高校は国立の名門進学校東京学芸大学付属高校に進学したからだ。
瀧口氏は独自路線を歩む。高校3年生の時、今後の進路を検討するなかで大学進学よりも事業に関心を持ち、17歳の時に起業し、大学には進学しなかった。その後、メドレーを設立し、医療介護の求人サービスを開始した。2人は医師と起業家と全く別の道を選んだが、ネット上で再会、「もっと患者も医師も納得できる医療を目指すべきだ」という点で意気投合した。
豊田氏は米国から帰国後、「一度、病院の外から医療界を見てみたい」とマッキンゼー・アンド・カンパニーにヘルスケアのコンサルタントとして転身した。そのころ瀧口氏は、求人事業が軌道に乗り、さらに医療に切り込むサービスの開発を検討していた。そのためには「医療の専門知識を持つ立場から事業を支える存在が必要だ」と考え、豊田氏に共同代表とならないかという話を持ちかけた。そして豊田氏は、「瀧口と話して第2の創業をしようと」決意し、2015年2月にメドレーの代表取締役に就任し、共同の経営者となったのだ。
「医療の課題を解決する様々なサービスを提供するのが目的です。起業家になりたかったのではなく、医療の世界を変えたい、効率化したいから挑戦しました。失敗したら、また医者に戻ればいいという甘い気持ちで挑んでいない」と豊田氏は話す。わずか1年余りの間に、周囲で同じ理念を持つ人材を次々にメドレーに誘った。そして相次いで新規事業を立ち上げた。
DeNAとは違う
まず、オンライン病気事典「MEDLEY」という医療メディアを立ち上げた。1400以上の病気情報のほか、約3万点の医薬品や約16万件の医療機関情報を集約。約500人の医師とのネットワークを構築し、医療情報を日々更新している。
ディー・エヌ・エーDeNA)の医療情報サイトのコンテンツの信頼性が問われ、社会問題化したが、豊田氏は「正確な医療情報を提供するのは極めて困難です。明確なエビデンス(証拠)が必要ですし、世界の医療情報は日々更新されていきます。医師によっても治療に対する考え方に違いがある。ある有名なサイトの医療情報は90%に間違いがあるとの指摘もあります 」という。
しかし、メドレーは多くの医師とつながっているだけでなく、社内に複数の医師を抱えている。「正確で客観性の高い医療情報を提供できる。そこが最大の我々の強みです」と強調する。
さらにメドレーは、医療機関の遠隔診療を支援する、オンライン通院システムのソリューション販売も開始。病院向けのビジネスを本格化している。この2つのサービスを支える人材は、東大医学部の同級生と後輩だという。両者とも医者としても有能な人材だ。「大学のなかでも2人ともすごく能力のある男たちだった。僕と同じような問題意識を持っていた」と豊田氏はいう。
■「東大・開成人脈」をフル活用

開成中学・高校(東京・荒川)
日本の医学界の頂点に君臨する東大医学部。その卒業生は東大以外にも他の医学部の教授や大規模病院の幹部医師として迎えられるケースが多い。順当に出世すれば、まさに「白い巨塔」の主になれる特別な立場だ。
そんな「金の卵」たちが簡単に起業に走ると思えないが、豊田氏は「東大の医学生の親が医師というのは比較的少ない。医学領域の研究や医療にこだわっている人は少なくないが、医者という職業そのものに固執する人は意外と少ないかもしれない」と話す。
ほかにも豊田氏は法務統括責任者に東大法学部出身の弁護士、東大工卒でJPモルガン証券の出身者を最高財務責任者CFO)にそれぞれ迎え入れた。両者とも開成の同級生らだ。
メドレーの社員はまだ115人。第2の創業から1年余りで、「業績の数字は未公表」という企業規模だ。しかし、その幹部人材は東大や一橋大学早稲田大学卒の人材がひしめく。グーグル、リクルートなどの企業で活躍したキャリアを持つ社員も多い。一昔前であれば、ベンチャー企業の経営には参加しなかった面々だろう。
「僕がなぜ医者をやめたのか、周囲の人間も徐々に理解してくれるようになりました。我々はお金もうけ以上に、医療を通じて社会に貢献したい。本気です」と強調する豊田氏。スーパー頭脳集団、メドレーは日本の医療を変えるのだろうか。
(代慶達也)

意味のある仕事(3)

 
*[次の世代に]おもしろき仕事を。
どんな仕事にも意味がある
つまりその仕事から得られるものはあるのだ、とよく言われた。
どんな労働にも学ぶべきものはある。
けれどそんなポジティブワードは今の若者には通じない。
「何かを見つける」のではなく「何が見つかるか」を分かりやすく。
今のスマホ世代は「そういうスピード感」を求めていると思う。
その代わり彼らはベタベタしていない。
一旦採用したら、会社にもたれ掛かって雇用リスクになる、という発想はあまり的確ではないだろう。
 
そして面白いことに出会えたら熱中する。
それこそ給料がどうとか休みがどうとかではない。
若者の熱意はそんなところにただ隠れているだけに違いない。
下積みがあってこそ一人前に、という世代はそろそろ退場してゆく時代だ。
大企業はともかく、中小企業から「自社の仕事の中身を考える時代」にいよいよ突入していると思う。
 

意味のある仕事(2)

*[次の世代に]ラベル、無記名。
人手不足が流行り言葉になっている。
ただひたすら「食べるためだけの労働」が減っているのはこれまでの経済発展のおかげで、結構なことだ。
そこでいよいよ「働くことの意味」が再考されているのだと思う。
もうこれまでの大人たちのように「仕事だから」と言って理不尽な仕事に若者は就いてくれないだろう。
今日本で働いてくれているアジア系の人たちも早晩そうなると思う。
「好きなこと」
「成長できること」
「洒落ていること」
「人の役に立つこと」
若者の就職の動機にはそんな言葉が並ぶ。 
企業の人事担当者などは
「この数年で大学名の重要性が高まっている」
「一時期は大学名より人間性という流れがあったが、就活で大学名を重んじる傾向に回帰している」
と言っているらしいが、時代から取り残されてはいないだろうか。
大学のラベルが関係なくなり、重要なのは「大学で得たスキル」であり、「本人の価値観」であることに気づいていない大企業はとても危うい。
特にまだ既得権益の世界に生きて、威容を誇る大企業には要注意だ。
そして中小零細企業であっても「イケてる仕事」が作っていければ人手不足は怖くない。
老いも若きも、流行り言葉に流されない落ち着きが必要だ。
(つづく)
 

意味のある仕事(1)

*[次の世代に]人手不足は役不足
日経MJ・就活の記事より。
「本当に女性の活躍を望んでいるかどうか、企業を厳正に審査している」
「女性採用に本気になるとはどういうことなのかを、企業に伝える」 
「空前の人手不足」がしょっちゅう話題に上る。
自分はこの話は、人手不足というよりは「役不足の問題」なのだと思っている。
ただ人が立って見張っているとか、電話をかけたり取ったりするだけの仕事とか。
得意先にルートセールスするとか、ひたすら飛び込み営業するとか。
研究職や職人でも、ひたすら何年も下積みをするとか。
そんな仕事は「今の若者に受け入れられない」だけなのだ。
 
だから「女性の活躍のために…」「ワークライフバランスを」「働き方改革を」という風潮には強い違和感を感じる。
自分が今二十歳のつもりになってみると「別にそんなことは魅力じゃねーよ」とつぶやいているに違いない
(つづく)
 
斜め上の先輩見つかる「就活美人」 女子学生を後押し
2019年7月21日 4:30

NIKKEI MJ

空前の売り手市場と言われる2020年入社の就職活動。すでに就活を終えた大学4年生が大半だろうが、実は娘がまだ就活を終えていない。口を出し始めたら止まらないので自重してきたが、かなりやきもきしている。

 
スカウトイベントで企業の採用担当者に女子学生がプレゼンをする
今後は通年採用にカジが切られ、就活が早く長くなる。学生の不安を食い物にするサービスも増えるだろう。特に女子学生では、就活でのパワハラやセクハラも問題になっている。安心して就職に関する考えを深め、自分のやりたいことや入りたい会社を探す手助けをしてくれ、企業の女性活用の本気を感じられる場。イベントで出合った「就活美人」に感銘を受けた。
就活美人は総合職を目指す女子学生に企業が直接アプローチができる採用マッチングサービスだ。運営するキャリア美人(東京・港)社長の広岡絵美さんは「本当に女性の活躍を望んでいるかどうか、企業を厳正に審査している」と話す。
女子学生にとっては就職に関するセミナーやイベントに参加できる学びの場であり、単なる面接対策などではなくキャリアをデザインする力を養うことを意図している。企業はイベントに参加でき登録情報をもとにスカウトもできる。「女性採用に本気になるとはどういうことなのかを、企業に伝えるのも使命のひとつ」と広岡さんは言う。
参加している企業は現在200社で登録学生は2万人。学生は無料でインターネット上で登録し、企業はスポンサー費用を支払う。すでに5年がたち、利用して就職したOGが企業で活躍している。彼女たちが様々なアドバイスをし、出身大学を超えた「疑似先輩」のネットワークが形成されているそうだ。
コンサルティング会社に内定した国立大学4年生は「就職課よりも自分を理解してくれた。違う大学出身のOGとの斜めの関係の中で、就職への考え方を固められた」と話す。就活美人のイベントがきっかけで3月にはほぼ就活を終えたそうだ。
広岡さんの話を聞くと、学生も企業もますます採用において情報と戦略が必要だと感じる。学生と企業の双方ともに、強者と弱者の二極化が激しくなるのは確かなようだ。

 
 
 
 
むらやま・らむね 慶大法卒。東芝、ネットマーケティングベンチャーを経てマーケティング支援のスタイルビズ(さいたま市)を設立、代表に。
他の人事関係者からは、この数年で大学名の重要性が高まっているとささやかれた。一時期は大学名より人間性という流れがあったが、就活で大学名を重んじる傾向に回帰しているという。
人事を扱う部署が「〇〇大学から何人入れた」として評価されやすいためもあるだろう。何を学んだかよりもどの大学にいたかを企業が重要視することを、闇雲に批判はしない。どの大学にいたかはどんな人脈を持つかという可能性を示唆するし、決して間違いではないと思う。
しかし、非ブランド校の学生にもさまざまな挑戦のチャネルがあるべきだ。その意味で就活美人は、非ブランド校の女子学生にこそ非常に意味がある。企業にも同じことが言え、大企業はもちろん女性を生かす努力をしている中小企業こそ使うべきだろう。
娘もこのようなサービスを知っていたらと悔やまれるが、苦戦したことを忘れずエネルギーにして、今後の人生に生かしてもらいたいと思う。
[日経MJ2019年7月19日付]

嘘かマコトか

*[次の世代に]結果よりも大事なこと
ほぼ日より。
嘘をつくことは、
じぶんの「自由」を失わせるということだ。
じぶんの損得や、気の弱さやらでつく嘘もある。
(中略)
嘘をつかないことでのめんどくささは自由へのコストだ。
一体嘘(とかホント)って何だろうかと考える。
人の生きている場は、どんな時代でも、
「ホントと嘘とどちらでもないもの」でできているから。
そうなのだ。
「嘘かホントか」は当人の気持ち次第。
本当だと思って話したことが、後から「嘘でしたね」というのはよくある話。
原発とか。
健康法とか。
だから常に「自分が本当だと思えること」を話すのがせいぜいだ、ということになる。
でも「そのこと」を知っていながら「後から嘘になるかもしれないこと」を平気で「ホント」のつもりをして話すのが自分たちではないか。
むしろ何が本当かは「実はわからない」ことを知っているから、少し虚しさを感じながらも自分に正直に話しましょう、ということかもしれない。
 
初めから人を欺くための計略などはなかなか成功しないものだが、そんな意図はなくても「嘘をつかないこと」は難しい。
そもそも意思表示をするってことが結構危険なことなのかもしれない。
でもリスクがあっても言いたいことは言いましょうよ。
 

糸井重里が毎日書くエッセイのようなもの今日のダーリン

 
・嘘をつきとおすことは、ほんとうにむつかしい。
いや、ひょっとしたら嘘をつきとおすことなど、
簡単だと思っている人もいるかもしれないけれど、
ぼくは、人間にはむつかしいものだと考えている。
 
その説明は、もう名作古典の領域にある。
「ひとつ嘘をつくと、
その嘘をほんとうに見せるために、
また別の嘘をつかなくてはならなくなる。
そして、後からついた嘘を、またごまかすために
別の新しい嘘をつかないといけなくなる。
やがて、いくつもの嘘が絡まりあって、
どうやって嘘がばれないようにするか
ということばかり考えているような生き方を
強いられてしまうようになる。」
親やら先生やら、よき先輩やらから、
きっとだれでもが教えてもらったことのある法則だ。
 
倫理としてではなく、ぼくなりのまとめ方をするならば、
嘘をつくことは、
じぶんの「自由」を失わせるということだ。
 
じぶんの損得や、気の弱さやらでつく嘘もある。
人を陥れようとつく嘘もあるし、武器としての嘘もある。
そして、緊急避難的に、つかざるを得ない嘘だってある。
おねしょしたこどもが、してないよと言い張るのも嘘だ。
 
できそうもないことだけれど、一切の嘘を禁じられたら、
人間社会は崩壊してしまうかもしれない。
人の生きている場は、どんな時代でも、
「ホントと嘘とどちらでもないもの」でできているから。
 
嘘をついてしまったり、
結果的に嘘になるようなことをしてしまうと、
そのせいで、どうしたって自由が小さくなる。
どこで、どんなふうに嘘をついたのかを、
あきらかにして謝ると、罰を受けるかもしれないけれど、
嘘をついて失っていた自由は取り戻せる。
嘘をつかないことでのめんどくささは自由へのコストだ。
それは、ずいぶん高いんだけど、払ったほうがいい。
 
今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
倫理として語られることを、そうでなく説明できたらなぁ。
 

自由こそ

*[政治]究極の言葉。
香港がデモで揺れ、中国が苦慮している。
中国が世界第二の経済大国になり、今ほどの存在になるとは思わなかった人は多いだろう。
自分などもここ数十年、「独裁主義の遅れた国」だと思っていた。
けれど、リーダーたちの工夫の結果、ムクムクと経済成長を遂げてきた。
相変わらず独裁主義のままでだ。
 
けれどおそらく、今の政治スタイルのままで、中国が欧米やアジアの本当の仲間やリーダーになることはないのではないだろうか。
「政治の自由がない国」のままで「自由な国たち」と付き合っていくのは難しいだろう。
世界中の国の人たちは、貿易とか経済とかだけでつながっているのではない。
国民が政治を選ぶ自由、つまり「自由」という究極の"自己選択ワード"なくしては、いくら経済が豊かになっても国は治まらないと思う。
これからの中国は、いよいよそんな瀬戸際に臨むのではないだろうか。
春秋
李文足さんのことをこの欄で書いたのは半年ほど前。「国家政権転覆罪」をおかしたとして、ことし1月に懲役4年6月の実刑判決を受けた中国の人権派弁護士、王全璋氏の妻である。先月末、当局の許可がようやく下りて、実に4年ぶりに夫と面会することができた。
▼大阪での米中首脳会談を間近にひかえたタイミングで実現した王氏との対面はしかし、李さんを恐怖させた。「夫は穏やかな性格だったのに、私の話をさえぎってまくしたてた」「今後2カ月は面会に来るなと言われた」「記憶力が弱っていた」「ロボットのようだった」……。脅迫や拷問、薬物の投与を、李さんは疑う。
▼中国で当局に拘束されるとどんな目にあうかわからない。王氏や李さんの経験が象徴するそんな恐怖こそは、香港で盛り上がってきたデモの原動力だろう。香港で身柄を拘束した容疑者の大陸への引き渡しに道を開く「逃亡犯条例」改正案に、多くの市民がおそれおののき、過去最大規模の街頭行動に繰り出したのである。
▼逃亡犯条例は臨終の眠りについた――。香港政府トップの林鄭月娥行政長官は9日に、改正を断念する考えを明らかにした。それでもなおデモの機運がくすぶるのは、市民の恐怖の深さの表れである。中国の習近平国家主席はかつて「あらゆる司法案件で公平と正義を感じられるように」する、と語ったこともあるのだが。

クラウドクリニック。

*[ウェブ進化論]最高のアシスタント。
インドで「クラウドクリニック」を旗印に急成長している医療ビジネスがあるという。
患者と利用者はアプリを通して問診し、動画や画像、音声にテキストとあらゆるデジタルツールが活躍するという。
しかもAIが、問診の様子から病気を予測もしてくれるらしい。
人がやる仕事を機械に頼む効率化もあるが、「専門家のノウハウ」をできる限り汎用化する効率化も重要だ。
しかも情報の精度を高めるために世界中のメディカルジャーナルや関連記事を数百万の単位で読み込み、機械学習をさせているというから驚く。2017年にバンガロールで産声をあげた同社は、すでに150のトップクラスの病院と提携し、600人の医師をネットワーク化している。
その中にはアポロ病院やクラウドナイン病院といったインドの超大手病院も名を連ねている。
病院経由で医師とつながりレベニューシェアをするため、病院側とのトラブルもない。
最近ではオンラインの診療だけでなく、外来患者の診察時にも医師が率先してこのシステムを使い始める病院があるという。 
医師のような専門家が「患者と直に対面すべきことに集中できる」ためのIT化はこれから加速度的に進むに違いない。
あらゆる分野の専門家の人たちは、それを脅威と捉えるのではなく、自分の専門性を深める視座が必要になるだろう。
 
 
インドのAI医療に期待
2019年7月12日 4:30
インドでは医師の数が圧倒的に少なく、人口10万人あたりの医師数は約80人と、日本の3分の1といわれている。病院のクオリティーも千差万別で、富裕層が対象で最先端な施設をそろえた病院から設備の古い個人運営クリニックまで、相当のばらつきがある。大都市圏では交通渋滞の慢性化もあり、具合が悪い時に病院に行くのも一苦労だ。

 
1997年慶応大総合政策学部卒、ソフトバンク入社。2000年ネットプライス(現BEENOS)社長、同社を上場に導く。15年シンガポールを拠点に起業家支援のBEENEXT設立
そんな中、どこでも誰でも簡単にアクセスできる「クラウドクリニック」を旗印にスマートフォン診療の分野で快進撃を続ける会社がエムファインだ。利用者が体調や症状をアプリに入力し、やり取りに答えて自らの状態を伝える。問診票を双方向にすることで、より簡単にしたイメージだ。
その後は症状に対応可能な医師の一覧が表示され、その場で診療を受けられる。医師とはビデオや写真、音声、テキストでやり取りし、診断後に必要に応じて処方箋が発行される。

病状が重い場合やオンラインで診断が難しい場合は病院での面談も予約できる。最近では小児科や婦人科、皮膚科、整形外科に加えて呼吸器科、神経科などの医師を多数かかえ、実に20の診療科に対応している。家族がいる場合は家族メンバーごとにアカウントを切り替えられ、母親が子供の症状や診断履歴を管理することもできる。利用者は診療後もアプリでやりとりができるため、継続的なフォローアップも可能だ。
医師側のシステムの使い勝手も実によくできている。同社では人工知能(AI)をフル活用し、利用者の問診情報に基づいて病気を予測する。そして医師に複数の候補を表示したり、追加での確認点を示唆したり、適切な薬の候補を提示したりもする。

当然、最後は医師が診断を下すので、あくまでも補助情報という位置付けになる。それでも細かいデータを全部格納し、時間の経過とともにますます精度が高くなっていくことは容易に予想できる。
しかも情報の精度を高めるために世界中のメディカルジャーナルや関連記事を数百万の単位で読み込み、機械学習をさせているというから驚く。2017年にバンガロールで産声をあげた同社は、すでに150のトップクラスの病院と提携し、600人の医師をネットワーク化している。
その中にはアポロ病院やクラウドナイン病院といったインドの超大手病院も名を連ねている。病院経由で医師とつながりレベニューシェアをするため、病院側とのトラブルもない。最近ではオンラインの診療だけでなく、外来患者の診察時にも医師が率先してこのシステムを使い始める病院があるという。
利用者と医師、病院のすべてにメリットがあるモデルを構築する同社はAIの力で医療現場の効率を上げ、インド全域の医療サービス向上に大きく貢献していくことと思う。
日経産業新聞2019年7月10日付]

デジタル世界の税金について

*[ウェブ進化論]リアルの"国"とは違う世界を。
最近いろんな先進国が、ITの超大手企業を相手になんとか課税しようと躍起だ。
フランスは当初、欧州連合EU)レベルで多岐にわたるデジタル税の導入を目指したが、アイルランドスウェーデンデンマークの反対に遭い、必要な全会一致の承認を得ることができなかった。
EUレベル、というのがどうもしっくりこない。
ユーラシア大陸だけの話ではないだろう。
さらにはこうだ。
ある世界的なIT企業の幹部はこう話す。「我々のビジネスモデルでは、税金を支払うべき場所を厳密に特定しにくい場合がある。欧州でもっと税金を払うことになるのは構わないが、その場合には米国での課税が減らなくてはならない」。
さてさて。
どこまでも広がる一方のネット社会での税金とはなんだろうか。
デジタル社会では「どこか一つの国」というのが存在しない。
だから「デジタル帝国そのもの」が一つの国だろうと思う。
今のようにEUとかアメリカとか中国とかいう「リアルの国」の単位の話はやめて「デジタル国」の単位で税金を課し、さらにその使い途も「デジタル国内」で考えてはどうだろうか。
デジタル企業に国籍があるから、といってそれをリアルな国の税金と結びつけるから話がややこしくなる。
デジタルはデジタルで閉じて考え、必要なインフラとかセキュリティについて応分のインフラ投資などを考えるのが自然ではないだろうか。
利用ユーザーの数に応じて、国ごとに税金を配分するような方法もあると思うが、どうもサイバー経済にはしっくりこないと思う。
デジタル帝国こそ国境を越え、みんなで運営していってはどうだろうか。
 
「デジタル税」、米仏対立の裏にあるのは?
2019年7月12日 13:51

Financial Times

米国の巨大IT(情報技術)企業に狙いを定め、フランス国内でのデジタル取引に課税するというマクロン大統領の計画をめぐり、米仏両国の間では数カ月前から緊張がくすぶっていた。だが今週、トランプ米政権がフランスのデジタルサービス税について、米企業の不当な差別にあたらないか調査を開始するという攻撃的姿勢を取ったことで、一気に緊張が高まった。調査は最終的に、仏製品への懲罰的関税につながる可能性がある。すでに高まっている大西洋間の貿易摩擦が大きく悪化しかねない事態だ。

トランプ政権はどこまで本気なのか

 
フランスのデジタル税導入で貿易摩擦の暗雲がたちこめてきたマクロン仏大統領(左)とトランプ米大統領=ロイター
デジタル税を理由にフランスを懲らしめるという脅しは、トランプ氏がツイッターで示したものではなく、ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表による正式な動きだ。いわゆる米通商法301条に基づき、課税が不公正な貿易慣行にあたらないか調査する。米国が中国との貿易戦争で用いているのと同じ法的枠組みであり、同じように真剣な姿勢ということになる。
USTRはフランスのデジタル税によって生じる米IT企業の損害について、時間のかかる評価作業に入る。その間に仏政府との協議で問題に決着がつかなければ、意見公募の期間を経て仏製品への追加関税発動に進めることになる。しかし、米政権がこのプロセスを終えるまでに1年以上かかる可能性もあり、すぐに関税が発動されることは考えにくい。

デジタル税のどこが問題なのか

フランスは11日、世界で7億5000万ユーロ(約920億円)、仏国内で2500万ユーロ以上の売上高を持つIT企業を対象に、ネット事業の売上高に3%を課税する先駆的なデジタル税の導入を決めた。消費者に関するデータを利用するオンライン広告の売り上げが主な対象で、アルファベット(グーグルの持ち株会社)やアップル、フェイスブックアマゾン・ドット・コムなどの米企業に加え、中国、ドイツ、スペイン、英国の企業など合計約30社が影響を受ける。仏企業も1社、ネット広告会社のクリテオが該当する。
仏当局は、幅広い国際合意がまとまるまでの一時的な措置だとしている。フランスは当初、欧州連合EU)レベルで多岐にわたるデジタル税の導入を目指したが、アイルランドスウェーデンデンマークの反対に遭い、必要な全会一致の承認を得ることができなかった。仏当局は今年のデジタル税収に5億ユーロを見込み、以後急速に増加するはずだとしている。

調査の次の標的は英国?

デジタルサービス税の導入計画で、英国もフランスのすぐ後を追っている。11日には、英国内でのSNSやネット検索、ネット通販による売り上げに2%課税する内容の法案が公表された。対象となるのは世界で5億ポンド(約680億円)以上、英国内で2500万ポンド以上の売上高を持つ企業だ。EU離脱をめぐる争いの中で立ち往生してしまわない限り、来年4月に導入され、2022年までに税収は年間4億ポンドに達する見込みだ。
この法案は英議会で幅広く支持され、米国の脅しを受けても承認される可能性が高い。閣僚らは、英国の法案も米国に目をつけられることを承知の上で推進する覚悟だ。ジェシー・ノーマン財務下級大臣は法案の公表に際し、「的を絞り、バランスも取れた」内容で、デジタルサービス税に関する国際合意がまとまれば撤回されると述べている。

国際的な取り組みは成功するか

欧州主要国の政府は以前から、自国内で巨大IT企業が得ている利益に課税できないことに不満を募らせていた。例えば、ハモンド財務相は昨年の予算演説で「前進は痛々しいほど遅い」と述べ、「いつまでも話を続けているわけにはいかない」ので単独行動に踏み切るべき時だと主張した。
EUでデジタルサービス税を導入しようとする動きが18年末に立ち消えになった後、20カ国・地域(G20)や経済協力開発機構OECD)の下で世界レベルの合意をまとめ上げることが目標となっている。今年6月、単独行動での課税が現実味を帯びるなか、G20財務相は「合意に基づく解決への努力を倍加し、20年までに最終報告をまとめる」ことで合意した。世界レベルでの解決策の模索では、公平かつ他の収益税の原則に準拠して巨大IT企業の利益に対する課税を分配するという問題が、各国の合意が得られない障害となっている。

シリコンバレーの反応は?

米国のIT企業は、デジタルサービスに追加課税しようとする欧州の動きに強い怒りを示している。二重課税につながりかねないとの主張だ。ある世界的なIT企業の幹部はこう話す。「我々のビジネスモデルでは、税金を支払うべき場所を厳密に特定しにくい場合がある。欧州でもっと税金を払うことになるのは構わないが、その場合には米国での課税が減らなくてはならない」。業界内では、フランスの計画に強硬姿勢を取ることをトランプ政権に期待する声が多いが、米国がOECDでの多国間協議を利用せずに一方的行動を取ることへの懸念も広がっている。企業幹部が最も恐れているのは、各国が保護主義の動きを強めて負の連鎖を呼ぶ貿易戦争に巻き込まれることだ。
By James Politi, Kiran Stacey, Harriet Agnew & Chris Giles
(2019年7月12日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/
 

アウェー指向。

*[次の世代に]ぬるま湯に浸かるな。

自分が今日過ごす日常を「アウェーかホームか」という風に考える。 

ホームにいるほうが、圧倒的に心地よく、気楽で過ごしやすい。

仕事とかプライベートでも自分が主導的になれるだろう。

けれど。

けれどもだ。

自分が鍛えられるのは、"圧倒的にアウェーにいるとき"だと思う。

よく仕事でも「必ずホームグラウンドで勝負する」タイプの人がいるが、あれはもう「守り」であり「演出」でしかないだろう。

自分を試したいのなら、進んでアウェーに身を置く術を身につけなければならない。

それって結構しんどいことだ。

いつも恥ずかしいし、ストレスがあるし、プレッシャーもすごい。

けれどそんな「アウェー」でこそ何ができるかを試すことにこそ意味がある。

居心地のいい、ホームステージでいつも通りの出番をこなしていい気持ちになるのではなく。

誰も自分を知らないところで、自分を試そう。

 

 

 

頭の休憩

*[次の世代に]人生の緩急。

ここのところ仕事とか研修が続いて三週間ほどぶっ続けで働いたのだが久しぶりで驚くことに。

 

毎日仕事が連続してあるだけで、精神的に余裕がなくなるのことに気づいた。

思考の幅が狭まる、とでもいうか。

よく忙しい外資マンたちが「リセットするためには休日が必須だ」と言っている意味がわかるような気がした。

高度成長期の人たちの話を聞くと、「毎日ひたすら休みもなく働いていて、自分たちのキャリアについて悩んだり考えたりしたことがない」という人が多い。

そういう時代だったのかもしれない。

時代のせいなのか、それとも自分がヤワになったのだろうか。

働き詰めになっていると「その他のこと」を考える余裕を失うようだ。

人生をうまく生きるには「猪突猛進の時期」と「立ち止まって眺める時期」の両方を意識しておく必要があるような気がした。  

で。

たまにはそうした「違った日常」に自分を置いてみることも大事なことだと思う。

商売の極意とか、スマホの未来とか(2)

*[ウェブ進化論]スマホが要らない日常。
日経より。
中国で急速に「中古品市場」が伸びているという。
車、ブランド品、衣服や家電、書籍まで。
その訳は「ユーザーの慣れ」もあるが「きちんと品質保証をする流通業者」の存在が大きいらしい。
金保障や数年間の品質保証を「業者自らがする」ことによって一気に広がっているという。
そうなると勢いは止まらない。何せ数が違う。
 
そしてさらに「スマホ」もその波に飲み込まれようとしているらしい。
これは(新機種だけを追い求める)今までの文脈とは違っている。
中国のスマートフォン利用者約7億人のうち、12%が中古品または再生品を所有している。

つまりどんどん「新しいスマホ」は必要なくなってきているということだ。

これからも先進的な機能はどんどん広がるだろうが、「基本的な必須の機能」はどんどん低価格化するだろう。
そうなれば、もう「デバイスとしてのスマホ」はそうしたこれまでの役割(認証とか決済とか)では必要なくなりそうだ。

 LINEで他人と話す、というのだって体内(とか耳)に埋めたチップでできるかもしれない。

 
スマホに必要なのは「見る」とか「調べる」といった「外界との目で見る(ビジュアルな)やりとり」に限られてくる。
便利なものは体内に。
SF映画の描写は、確実に自分たちの世界に訪れている。
 
[FT]車やブランド品、中国の若者は中古品ブーム
2019年8月2日 15:58
中古品が好きなのは母親にはわかってもらえないと、北京に住むチャン・シャオさん(29)は言う。「母は絶対に中古品は買わないの」
中古車売買アプリ「瓜子」は直売店も増やしている(広東省東莞市)
中国では何世代にもわたり、中古品は質の悪さと貧しさを意味するものと見なされ、買うのは恥ずかしいこととされてきた。だがチャンさんのように、若い世代の消費者は中古品を受け入れている。タブレット端末の「iPad」から洋服に至るまで、インターネットの販売サイトが中古品の売買を押し上げている。
北京のシンクタンク、中国インターネット経済研究センターによると、中国の中古品市場は2020年に1兆元(約16兆円)規模に達する見込みだ。17年時点の規模の2倍に相当する。投資家もこの動きに注目し、自動車からブランド品のハンドバッグに至るまで、様々な中古品を売るサイトに数十億ドル(数千億円)の資金を投じている。
中国の中古品市場拡大の背景には、数十年にわたって消費支出が拡大した結果、大きな転売価値を持つ中古品が大量に存在していることがある。加えて、個人間でも地域間でも富の格差が拡大し、ある消費者にはゴミでも別の消費者にはお宝ということも起こりやすくなっている。
だが、中古品が受け入れられるようになったことは、多国籍企業に困難をもたらしている。「多くの製品分野で、新しいものだけでなく中古品も含めて競争が拡大する傾向が強まっていく」と、消費者調査会社チャイナ・スキニーのマーク・タナー氏は言う。

取引の大部分はネット販売

調査会社クエストモバイルによると、中古品取引の大部分はネット販売で、中国の大都市の消費者の6割超が中古品を売るフリマアプリを日常的に使っている。
だが、世代間の格差が大きい。新興企業の情報提供を行う運営サイト「36Kr」によると、フリマアプリの利用者の85%が35歳以下の消費者だ。若い消費者は一般的に中年世代より所得が低く、中古品に対する抵抗感が薄い。
この傾向が最も顕著なのが中古車市場だ。中国の自動車保有台数は約2億4000万台で、19年上半期の中古車販売台数は前年同期比3%増の約690万台。景気の先行き不透明感を受けて新車販売が減る中での増加だ。
「10年前なら、中国の消費者は中古品を受け入れないと言えた」と、中古車取引サイト「優信」の戴●(たまへんに昆)・最高経営責任者(CEO)は言う。「中古車を買うのは痛々しいという感じだった」
だが、車が贅沢(ぜいたく)品から日常生活の足へと変わり、そうした受け止め方も変わったという。優信は昨年、80万台の中古車を販売した。大都市の中年のオーナーから小さな都市に住む所得水準の低い若者の手に渡るケースが多い。
米国など先進国では、中古車と新車の販売台数は一般的に約2対1の比率になっているが、中国ではその逆だ。
戴氏の推計では、いま中国で使われている車の約半数は使用年数が5年を超え、買い替え時期に差しかかっている。中国の中古車と新車の比率も10年以内に米国並みになるはずだと、戴氏は言う。
そうした展望が投資家を引きつけている。従来型の自動車販売店と提携し、今年は3倍の販売増を目標とする優信は、昨年の米ナスダック市場への上場で2億2500万ドルの資金を調達し、ベンチャーキャピタルからも12億ドルの資金提供を受けている。

瓜子は積極的に資金調達

競合企業の瓜子は、中国最大の通販サイトであるアリババ集団の淘宝網タオバオ)と提携。米ゴールドマン・サックスなどから8億1800万ドルを調達したのに続き、3月には日本のソフトバンク・ビジョン・ファンドから15億ドルの出資を得た。大捜車も12億ドルの資金を調達している。
瓜子は中古車をアプリと実店舗に出品する前に、オーナーに販売価格の半額を支払っている。同社サイトでの昨年上半期の販売台数は33万6000台で、景気が減速する中でも通年の販売台数は倍増したという。
「景気が良くないと中古車の購入を考える人が増える」と、瓜子のジョイス・チャン最高技術責任者(CTO)は言う。「中古車ビジネスは景気の波と反対方向に動く」
あらゆる中古品販売業者が直面している最大の問題は、信用を得ることだ。瓜子は30日以内の全額返金を保証し、無償の4年保証も提供している。優信と同様、瓜子もアプリ利用者が車の状態を詳しく動画で調べられるようにしている。
「3年前まで顧客は実際に車を見て触りたがったが、他の商品の中古品販売サイトで慣れた人が増え、かなりの人に信用してもらえるようになった」と、チャン氏は言う。
自動車メーカーにとって、中国の中古車市場拡大は功罪相半ばする。15万元以下の低価格車の販売が中古車に食われていると、コンサルティング会社JSCオートモーティブのヨッヒェン・ジーベルト氏は言う。
だが、車を売る消費者は上位クラスの新車を買うことが多く、上級車メーカーの追い風になりうる。「上のクラスになるほど状況は良くなる。高級ブランドにとって素晴らしいニュースだ」

高級品にも恩恵

投資家は、次に恩恵が及ぶのは高級品だと踏んでいる。コンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニーによると、中国の消費者は12年にブランド品への支出で世界トップとなり、世界全体の購入額の約3分の1を占めている。
ベレンベルク銀行によると、日本の高級品市場では中古品が10%を占めているのに対し、中国ではわずか3%にとどまっている。北京に本社を置き、啓明創投などのベンチャーキャピタルから3800万ドルを調達した中古ファッション品の通販サイト「プラム」など、いくつかのサイトが中古品の割合を高めようとしている。
「中国の顧客は大量の高級品やファッション品を抱え込んでいる。少し使われただけ、あるいは未使用のものも多い」と、啓明のパートナーの呉静氏は言う。「お金に限りのある若い世代はファッション品の転売をはるかに受け入れやすい」
中国ネット通販最大手のアリババも、傘下のフリマサイト「閑魚」を通じて中古品市場に参入している。電子機器や洋服、おもちゃなど、閑魚の昨年の流通総額は1億元に達し、毎日200万点以上の商品が出品されている。
アリババの最大のライバルである騰訊控股(テンセント)は、ネット古書通販の「デジャブ」に出資している。17年の立ち上げ以来、販売総数は300万冊を超えているという。

携帯電話も大きな市場

大きな中古品市場としてもうひとつ、携帯電話がある。調査会社IDCによると、中国のスマートフォン利用者約7億人のうち、12%が中古品または再生品を所有している。
昨年1000万台のスマホをオンライン販売して70億元を売り上げた「愛回収」は、中古スマホを買い取る実店舗を300カ所以上に構えている。
同社は6月、中国ネット通販2位の京東集団(JDドットコム)から5億ドルの出資を受けた。蓄積されているデータにより、実店舗の業者より効率よく値付けができると、愛回収のマイケル・クオ副社長は言う。「我々の実店舗の9割以上が利益を出している。今年も出店を続ける計画だ」
愛回収に出資するモーニングサイド・ベンチャー・キャピタル(晨興資本)のパートナーの石建明氏は、中国のスマホ販売の成長が止まった今、メーカーは中古品市場の発展を歓迎すべきだと言う。
「市場が飽和すれば、消費者の買い替えに成長を頼る必要がある」と同氏は言う。「古い携帯電話を処分しやすくすることがメーカーの優先課題になっている」
Tom Hancock & Wang Xueqiao
(2019年7月31日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/
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商売の極意とか、スマホの未来とか(1)

*[ウェブ進化論]商売の基本に帰る。
日経より。
自国の人同士でさえ基本的に「他人は信用はしない」と言われていた中国人。
それだけ「外部と(身内と)の警戒心が高い人たち」とも言えたと思う。
だから他人の使った中古品というのはからきし人気がなかった。
中国では何世代にもわたり、中古品は質の悪さと貧しさを意味するものと見なされ、買うのは恥ずかしいこととされてきた。

他人は信用せず、近親者だけで、だからこそ「一層強固なつながりを作る」というのが一昔前の中国文化だったと思う。

当時(10年前)中国の商慣習や文化を聞くたび、"他人が騙されたり、出し抜かれたりする"のを「まるでゲームのように楽しんでいる」ようにさえ見えたものだ。
 
そんな中国市場が成熟しているらしい。
あらゆる中古品販売業者が直面している最大の問題は、信用を得ることだ。瓜子は30日以内の全額返金を保証し、無償の4年保証も提供している。 
結局「私は信用を提供します」と誰が初めに言い出すのか。
そこから流れが変わった。
商売の極意は古今東西、結局変わらない。
「まずはお試しください」
「いつでもお返しください」
「なんでも修理します」
そんな簡単な原理が中心にあるのは、今の日本の小売りを見てもよく分かる。(というかそういう姿勢でないと今や市場に入れない)
 
「私がやります」という正義感というか、使命感の発信が市場を動かすのは今も昔も同様のようだ。
また一つ勉強してしまった。
(つづく)
 
 
[FT]車やブランド品、中国の若者は中古品ブーム
2019年8月2日 15:58
中古品が好きなのは母親にはわかってもらえないと、北京に住むチャン・シャオさん(29)は言う。「母は絶対に中古品は買わないの」
中古車売買アプリ「瓜子」は直売店も増やしている(広東省東莞市)
中国では何世代にもわたり、中古品は質の悪さと貧しさを意味するものと見なされ、買うのは恥ずかしいこととされてきた。だがチャンさんのように、若い世代の消費者は中古品を受け入れている。タブレット端末の「iPad」から洋服に至るまで、インターネットの販売サイトが中古品の売買を押し上げている。
北京のシンクタンク、中国インターネット経済研究センターによると、中国の中古品市場は2020年に1兆元(約16兆円)規模に達する見込みだ。17年時点の規模の2倍に相当する。投資家もこの動きに注目し、自動車からブランド品のハンドバッグに至るまで、様々な中古品を売るサイトに数十億ドル(数千億円)の資金を投じている。
中国の中古品市場拡大の背景には、数十年にわたって消費支出が拡大した結果、大きな転売価値を持つ中古品が大量に存在していることがある。加えて、個人間でも地域間でも富の格差が拡大し、ある消費者にはゴミでも別の消費者にはお宝ということも起こりやすくなっている。
だが、中古品が受け入れられるようになったことは、多国籍企業に困難をもたらしている。「多くの製品分野で、新しいものだけでなく中古品も含めて競争が拡大する傾向が強まっていく」と、消費者調査会社チャイナ・スキニーのマーク・タナー氏は言う。

取引の大部分はネット販売

調査会社クエストモバイルによると、中古品取引の大部分はネット販売で、中国の大都市の消費者の6割超が中古品を売るフリマアプリを日常的に使っている。
だが、世代間の格差が大きい。新興企業の情報提供を行う運営サイト「36Kr」によると、フリマアプリの利用者の85%が35歳以下の消費者だ。若い消費者は一般的に中年世代より所得が低く、中古品に対する抵抗感が薄い。
この傾向が最も顕著なのが中古車市場だ。中国の自動車保有台数は約2億4000万台で、19年上半期の中古車販売台数は前年同期比3%増の約690万台。景気の先行き不透明感を受けて新車販売が減る中での増加だ。
「10年前なら、中国の消費者は中古品を受け入れないと言えた」と、中古車取引サイト「優信」の戴●(たまへんに昆)・最高経営責任者(CEO)は言う。「中古車を買うのは痛々しいという感じだった」
だが、車が贅沢(ぜいたく)品から日常生活の足へと変わり、そうした受け止め方も変わったという。優信は昨年、80万台の中古車を販売した。大都市の中年のオーナーから小さな都市に住む所得水準の低い若者の手に渡るケースが多い。
米国など先進国では、中古車と新車の販売台数は一般的に約2対1の比率になっているが、中国ではその逆だ。
戴氏の推計では、いま中国で使われている車の約半数は使用年数が5年を超え、買い替え時期に差しかかっている。中国の中古車と新車の比率も10年以内に米国並みになるはずだと、戴氏は言う。
そうした展望が投資家を引きつけている。従来型の自動車販売店と提携し、今年は3倍の販売増を目標とする優信は、昨年の米ナスダック市場への上場で2億2500万ドルの資金を調達し、ベンチャーキャピタルからも12億ドルの資金提供を受けている。

瓜子は積極的に資金調達

競合企業の瓜子は、中国最大の通販サイトであるアリババ集団の淘宝網タオバオ)と提携。米ゴールドマン・サックスなどから8億1800万ドルを調達したのに続き、3月には日本のソフトバンク・ビジョン・ファンドから15億ドルの出資を得た。大捜車も12億ドルの資金を調達している。
瓜子は中古車をアプリと実店舗に出品する前に、オーナーに販売価格の半額を支払っている。同社サイトでの昨年上半期の販売台数は33万6000台で、景気が減速する中でも通年の販売台数は倍増したという。
「景気が良くないと中古車の購入を考える人が増える」と、瓜子のジョイス・チャン最高技術責任者(CTO)は言う。「中古車ビジネスは景気の波と反対方向に動く」
あらゆる中古品販売業者が直面している最大の問題は、信用を得ることだ。瓜子は30日以内の全額返金を保証し、無償の4年保証も提供している。優信と同様、瓜子もアプリ利用者が車の状態を詳しく動画で調べられるようにしている。
「3年前まで顧客は実際に車を見て触りたがったが、他の商品の中古品販売サイトで慣れた人が増え、かなりの人に信用してもらえるようになった」と、チャン氏は言う。
自動車メーカーにとって、中国の中古車市場拡大は功罪相半ばする。15万元以下の低価格車の販売が中古車に食われていると、コンサルティング会社JSCオートモーティブのヨッヒェン・ジーベルト氏は言う。
だが、車を売る消費者は上位クラスの新車を買うことが多く、上級車メーカーの追い風になりうる。「上のクラスになるほど状況は良くなる。高級ブランドにとって素晴らしいニュースだ」

高級品にも恩恵

投資家は、次に恩恵が及ぶのは高級品だと踏んでいる。コンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニーによると、中国の消費者は12年にブランド品への支出で世界トップとなり、世界全体の購入額の約3分の1を占めている。
ベレンベルク銀行によると、日本の高級品市場では中古品が10%を占めているのに対し、中国ではわずか3%にとどまっている。北京に本社を置き、啓明創投などのベンチャーキャピタルから3800万ドルを調達した中古ファッション品の通販サイト「プラム」など、いくつかのサイトが中古品の割合を高めようとしている。
「中国の顧客は大量の高級品やファッション品を抱え込んでいる。少し使われただけ、あるいは未使用のものも多い」と、啓明のパートナーの呉静氏は言う。「お金に限りのある若い世代はファッション品の転売をはるかに受け入れやすい」
中国ネット通販最大手のアリババも、傘下のフリマサイト「閑魚」を通じて中古品市場に参入している。電子機器や洋服、おもちゃなど、閑魚の昨年の流通総額は1億元に達し、毎日200万点以上の商品が出品されている。
アリババの最大のライバルである騰訊控股(テンセント)は、ネット古書通販の「デジャブ」に出資している。17年の立ち上げ以来、販売総数は300万冊を超えているという。

携帯電話も大きな市場

大きな中古品市場としてもうひとつ、携帯電話がある。調査会社IDCによると、中国のスマートフォン利用者約7億人のうち、12%が中古品または再生品を所有している。
昨年1000万台のスマホをオンライン販売して70億元を売り上げた「愛回収」は、中古スマホを買い取る実店舗を300カ所以上に構えている。
同社は6月、中国ネット通販2位の京東集団(JDドットコム)から5億ドルの出資を受けた。蓄積されているデータにより、実店舗の業者より効率よく値付けができると、愛回収のマイケル・クオ副社長は言う。「我々の実店舗の9割以上が利益を出している。今年も出店を続ける計画だ」
愛回収に出資するモーニングサイド・ベンチャー・キャピタル(晨興資本)のパートナーの石建明氏は、中国のスマホ販売の成長が止まった今、メーカーは中古品市場の発展を歓迎すべきだと言う。
「市場が飽和すれば、消費者の買い替えに成長を頼る必要がある」と同氏は言う。「古い携帯電話を処分しやすくすることがメーカーの優先課題になっている」
Tom Hancock & Wang Xueqiao
(2019年7月31日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/
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アートの力。

*[次の世代に]チームラボの仕事
チームラボが豊洲で展開する美術館に230万人が来館しているという。
自分は地元で夜に通りがかって入ってみたが驚いた。
一言で言うと「インタラクティブ」。
さらには「立体」。
さらには「水と空気と映像」。
そして迷路。
 
自分以外はほとんどがカップルだったが、そうしたデートの場としても実に楽しそうだった。
鏡の部屋に座り込んで手をつないでいたり。
迷路で互いを探しあっていたり。
それでいて喧騒な感じはない。
 
訪問するまでは「映像で水面に魚を写して何がアートなのか」と思っていたが、どれもが新しい体験だった。
しかもそれを外国人観光客が、わざわざ豊洲まで見に来るという宣伝も素晴らしい。
チームラボの凄さはその辺にあるのではないだろうか。
都心の美術館をも凌ぐ、彼らのアプローチにはこれからの"発信"のエッセンスがあるのではないだろうか。
 
 
デジタルアート美術館に初年度230万人 集客力の秘密
2019年7月14日 4:30
世界に先駆け、東京に誕生したデジタルアートミュージアムが2019年6月21日、開業から1周年を迎えた。入館者数は約230万人。うち半数が訪日外国人客とみられ、世界160カ国以上から詰めかけた。美術館としては国内有数となる、圧巻の集客力が明らかになった。
平日でも開館前には長蛇の列ができる。そのほとんどが外国人客だ
新橋と豊洲を結び、東京のベイエリアをひた走る、ゆりかもめ。列車が青海駅に到着すると、外国人客がどっと降りる。
一目散に向かうのは、お台場のシンボルである大観覧車ではなく、その真下。ここに、世界初のデジタルアートミュージアムこと、「MORI Building DIGITAL ART MUSEUM: EPSON teamLab Borderless(森ビルデジタルアートミュージアム:エプソン チームラボボーダレス)」がある。
ミュージアムを運営するのは、大手デベロッパーの森ビルと、ウルトラテクノロジスト集団「チームラボ」。東京レジャーランドの跡地を改装し、延べ床面積約1万平方メートルの圧倒的なスケールで華々しくオープンしたのは、18年6月21日だった。
開業から3カ月は、前売りチケットが連日完売。その勢いは、全く衰えず、開業5カ月余りで100万人を集め、1年で230万人まで積み上げた。東京国立博物館金沢21世紀美術館と初年度から肩を並べる、異例の入館者数を記録したのだ。
開業1周年を記念し、エントランスに巨大な世界地図を設置。居住国にシールを張ってもらうと、米国が抜きんでて多かった
特筆すべきは、その半数が訪日外国人客だったこと。最も多かったのは、米国。外国人客の27%を占め、以下、豪州(10%)、中国(9%)、タイ(6%)、カナダ、イギリス(いずれも5%)と続く。訪日外国人のマジョリティーであるアジアからの客よりも、欧米からの客のほうが多いという 「逆転現象」が起きた。すべての国名を足し合わせると、160カ国以上。五大陸を制覇しただけでなく、世界の約8割の国をカバーするに至った。
「以上」と表現しているのには理由がある。実は、国名の集計を取り始めたのは19年2月16日から。しかも、公式サイトでチケットを買った人のみをカウントしており、実際には160カ国をはるかに上回っている可能性が高い。
開業から1年を経てもなお、待機待ちの列は路上まで延びる
実際に平日、休日を問わず、今なお、午前10時の開館前には、数百人が列をなす。ざっと見たところ、そのほとんどが外国人で、国籍もバラバラなようだ。入場待ちの列はエントランスの階下まで延び、路上まで延々と続く。
開業効果は、周辺にも波及した。青海駅の乗降客数は、前年比で1.5倍、隣接する商業施設「ヴィーナスフォート」の入館者数は1.2倍に膨らんだ。1館にとどまらず、東京のベイエリア全体に客を呼び込み、回遊性を大きく高めたという点では、近年でまれに見るヒット施設と言えよう。
チームラボ ボーダレスの開業により、青海駅は外国人の利用が急増。乗降客数が前年比で1.5倍に増えた
米国のヒップホップアーティスト、スウィズ・ビーツ(Swizz Beatz)とナズ(Nas)が館内でミュージックビデオを撮影し、令和初の国賓として来日したメラニア・トランプ米大統領夫人が訪れるなど、海外からの注目度は高まる一方だ。

なぜ集客に成功したのか

なぜ、短期間でこれほど多くの外国人客を集められたのか。世界でデジタルアートを発表してきたチームラボの知名度によるところも大きいが、同ミュージアムの杉山央企画運営室長は「世界に類のない、全く新しいミュージアムだから」とその理由を口にする。
「チームラボ ボーダレス」という名の通り、館内に広がるのは「ボーダレス」な世界。作品と作品を隔てる境界はなく、広大な空間すべてをスクリーンに見立て、デジタルアートが縦横無尽に動き回り、時に交じり合う。
館内を入ると、花が咲き乱れる迷路のような道が続く
順路も地図もない。薄暗い空間の中、現れては消えるアートを追って、入館者自身がさまよい、探索し、発見する。迷路のように入り組んだ隘路(あいろ)を進むと、突如として視界が開け、目の前を雄大な滝が流れ落ちる。その幻想的な光景に見とれるもよし、さらに歩みを進めるもよし。心ゆくまで没入できる体験型のコンテンツが、国境や言葉をも超えた。
流れ落ちる滝の映像をバックに、多くの人々が記念撮影に興じていた
外国人客をうならせたのは、演出の力も大きい。最先端のアートに見えて、実は、日本の四季や伝統芸能が巧みに表現されている。
館内を彩るのは、日本の四季と連動した里山の風景。春は桜が咲き乱れ、夏は青々とした稲が生い茂る。秋は稲穂が実り、冬はツバキが花開く。人の存在に共鳴して光を広げる「ランプの森」も、季節によって色彩が変わる。
「ランプの森」は、人の存在を感じて光の色が変わる。それが周囲のランプにも伝播(でんぱ)し、幻想的な光が広がる
江戸時代の絵師、伊藤若冲の屏風絵を、立体的な映像作品として昇華させた他、浮世絵の技法で瀬戸内海の渦潮を描画。さらには、「日本最古の漫画」と評される鳥獣戯画をモチーフに、ウサギやカエルが阿波踊りを繰り広げるデジタルアートを展開した。日本の伝統をテクノロジーの力でよみがえらせた「動く時代絵巻」の数々が、海外客の心をわしづかみにした。
一服の茶をたてると、器の中から無数の花が生まれ続ける「EN TEA HOUSE」や、指先で漢字に触れると、その字が持つ意味が映像となって目の前に広がる「漢字アート」など、現代に息づく日本文化にも、楽しく触れられる。
「運動の森」と題したエリアでは、体を動かしながら、立体的な思考を育める。そこに広がるのは、山や谷を表現した起伏に富んだ斜面。自らが描いた生き物が解き放たれ、「野山」を駆け回りながら、自然界の食物連鎖を目の当たりにできる。トランポリンも、ただ置かれているだけではない。飛び跳ねれば、時空が歪む映像が広がり、星の一生を追体験できる。言葉に頼らず、五感に訴える演出を施し、家族で楽しめるようにしたことで、幅広い世代を取り込むことに成功したのだ。
こうした唯一無二のアート空間を形にするため、舞台裏では520台のコンピューターと470台のプロジェクターが稼働している。「10年前では実現できなかった最先端のデジタル技術を多く入れた。『現代アート中の現代アート』を目指した」と杉山氏は言う。

日本を代表するデスティネーションに

森ビルは、なぜ異業種であるチームラボと共に、新たなミュージアムを立ち上げたのか。そこには、東京を世界一の都市に押し上げるという目標があった。「東京から世界へ文化、アート、テクノロジーを発信し、東京の磁力を向上させたかった」と杉山氏は振り返る。
都市の磁力とは、世界から人、モノ、カネ、情報を引き寄せられる力だという。「現代は都市の時代と言われている。都市間競争が激しくなる中で、東京が世界から選ばれるためには、都市の磁力を高めることで、イノベーションや新しいライフスタイルが生まれるようにしなければならない」(杉山氏)。
磁力を高めていくためには、都市の総合力を高める必要がある。しかし、森ビルのシンクタンクである森記念財団が毎年発表している、その名も「世界の都市総合力ランキング(GPCI)」では、東京は英ロンドン、米ニューヨークに次ぐ、3位が定位置となっていた。
「研究や開発、経済に強みがある一方、文化と交流の力が弱いという結果が出た」(杉山氏)。そこで範としたのが、首位を独走するロンドンである。12年に五輪を開催して以降も、年々スコアを伸ばしていた。美術館や博物館といった文化的施設が集積し、アートを積極的に発信したことで、都市に厚みが加わったという。
東京にも、世界から人々が集うデスティネーション(目的地)となり得る場所が必要だ。そう考え、世界各地で斬新な企画展を開催してきたチームラボと手を組み、この世に二つとない、アートとテクノロジーが融合した世界をつくり上げたのだ。
実際、この戦略は見事にはまった。森ビルが入館者に対してアンケート調査を実施したところ、訪日外国人客の半数がこのミュージアムを目的に来日したと答えた。「日本の新たなデスティネーションになる」という目標は、開業1年で、早くも達成されたと言える。

完全新作の投入を明言

20年の東京五輪パラリンピックに向け、日本を訪れる外国人はさらに増えるだろう。ましてや、このミュージアムは、五輪会場に程近い東京のベイエリアにある。さらに多くの観光客が詰めかけるのは、想像に難くない。
杉山氏は「何度来ても新たな発見や変化を体験できるよう、既存作品をアップデートし、全く新しい作品の追加もこれから発表する」と、さらなるてこ入れを明言した。日本を世界に発信する拠点として、より多くの国から、より多くの人々が訪れる、「ボーダレス」なミュージアムを目指し、アートの世界の探索は続く。
(日経クロストレンド 酒井大輔)
[日経クロストレンド 2019年6月25日の記事を再構成]