その夜も飲み会があった。
ほぼ最終電車くらい、まで飲みあわて、帰路に着く。
自宅は郊外のベッドタウンK市。
私鉄沿線で今の時間なら30分ほどでつくだろう。
乗り過ごさぬよう気を遣いながら、ついうとうと。
ようやく駅に。
自宅までは徒歩20分ほどだ。
十分少々歩いたところで、どうしたことか「ぱったり」体の力がなくなった。
疲れたな…
ちょうど最寄りの公園の前だ。
少しだけ休憩して帰るか。
すぐそばにあったすべり台に腰を下ろす。
はぁ。
そう言えば、すべり台ってもたれかかるのにはちょうどいい。
リクライニング・シートみたいなもんだ。
斜面に背中をあずけると、何だか夜空を眺めているようだ。
あまり星は出ていないな。
ふ、と気がついたら、シトシト雨が。
あわて時計を見る。
午前二時半。
二時間近くも寝てたのか・・・
急いで体をおこし、そそくさと家をめざす。
着いたらすぐ寝ないと。あと四時間もしたら朝だ。
翌朝自宅にて。
ん?
何かおかしい。
メガネがない。
どこかに忘れたか。
忙しく昨日の記憶をたどる。
会社、じゃない。
飲み屋か電車か、ホントに会社ってことはない、な。
いやひょっとして、実は自宅のどこかにあるのかも。
ちょっと混乱しながらも、仕方なく会社へ向かう。
小雨降る中。
急ぎ足で、昨晩の公園を通り過ぎながらふと、すべり台の方を見やる。
あ。
あの、すべり台一番下の平らなところ。
あんなところに。
めがね。
そうか。
昨日の夜俺はメガネを外して寝てたのか。
メガネをかけ、ずい分ホッとしながら駅に向かう。
何だか年を取ったものだ、と少し寂しく。
ちょっと哀愁
関西の親友Kくん。
商社マンで各国を飛び回る彼から、昨日聞いたエピソード。
何だか四十三、四の、今の自分たちを表しているようで、妙に心に残った。
ちょっと寂しいが、けっこう「今の自分たち」に合う話しなのだ。