本書で最も重要なポイントは何か?を考える。
ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)
- 作者: 梅田望夫
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2007/11/06
- メディア: 新書
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本書が「二十代、三十代の若者」へ向けて書かれている「生き方の書」という意味で
第四章 ロールモデル思考法、だ。
(自分の「好き」という直感を頼りに
「なぜ好きか?」という構造を考えて「お手本」として蓄積し、
実生活に反映していく方法)
前提となる「高速道路」の存在や「けもの道をゆくこと」そして
そのためのアドバイスが詰まった第三章も重要だが、
実際に著者自身が「なぜけもの道を選び」
「どのような方法」で生き抜いてきたか、が明かされている。
ここで梅田望夫は裸になった。
(自分のこれまで培った「極意」と言ってもいいようなことを惜しげなく「晒す」。
これがプログラム技術でない「もう一方のオープンソースをひた走る」著者のスタンスそのものだろう)
いまは、著者自身も高速道路を使いその先をゆく。
ん?高速道路?
いや著者は「高速道路を進みきる」のではなく「けもの道ランナー」ということになっていたはず。
(「けもの道」とは大企業のように「道しるべ」はないが、個の力を磨いてフリーランス的な仕事を志向すること)
だが著者は明らかに何かのハイウェイを疾走していないか。
人生の高速道路。
人の「生き方」に決まった手順など、ないだろう。
一人ひとりが自分の意思(あるいは周りの環境)でどんな選択肢もあり得る。
あえて生き方へのアドバイス、というなら、
明るく、とか
ウソつくな、とか
約束は守れ、とか
そんな道徳の教科書みたいなものになる。ふつう。
だが、今を「産業革命以前と以後」に匹敵する時代の変わり目(これにも理由がある)、
とみた著者は「ウェブ革命以前と以後」という軸を設定し、その「ウェブ時代」を生き抜く
非常に「実践的なアドバイス」をしているのだ。
つまりこれまでの数百年に通用してきたような、あまりにも抽象的な「生きかたのことわざ」ではなく、
これからの「ウェブ時代にこそ」特別に必要であろう「生き方のルール」を説いているのだと。
しかも著者自身が「その先陣」を張って切り進んでいる。
「人生の」というと安直だが
「仕事人生の高速道路」という方が正しいか。
間違いなくこの章で紹介された「ロールモデル思考法」は、そのものがお手本(ロールモデル)であり、
「仕事を選ぶ」を考える上での「高速道路」だと思う。
構造化の天才
この高速道路は梅田建設(ゼネコン)が作っている。
あえていうなら「けもの道向け」高速道路か。
テーマが将棋、とかヴァイオリン、とか特定されるものではないから、誰もが走っておくべきだろう。
それにしても、
自分の人生をこれほどにも正面から捉えながら、中でも
「職業」というものについて
自分の「好き」という直感を根拠に、
ロールモデル(お手本)を探し、蓄積して
一歩づつ慎重ながらも「最速」で進んでゆく梅田望夫とは何という人だろうか。
ううぬ、これほど戦略的に、いや、というより「これほど論理的」に自らの仕事を語る人を自分は寡聞にして知らぬ。
折々の人生の岐路、において「惰性で」とか「雰囲気で」とか「取りあえず」といった部分が微塵もない。
なんと緻密な積み重ねか。(驚)
またハタと。
ウェブ進化論はどうだ。
あれぞウェブ世界の「構造図そのもの」だったじゃない。
「分かりやすい本だね」と言う人も多いが、とんでもない「基本書」だ。
構造化の天才。
そんな言葉が思い浮かぶ。
著者は本章で、少年時代にシャーロックホームズに魅せられて以来、興味を持ったあらゆるものを「構造化」してきている歴史がわかる顕している。(p121)
それから今に至るまで連綿と続いてきた「構造化の積み重ね」。
それが「インターネットの出現」に焦点を当てて「ウェブ進化論」が誕生する。
進化はその後も続いている。
羽生氏が提示した「高速道路理論」だってそういう(構造化という)視点で見ないと
「単なるネットの便利」として片付いてしまっていたのではないか。
いまネットで起こっていること、特にこれまで「時間や距離に制約」を受けていた「人間の営み」は軒並み「高速道路化」されつつある。
過去の論文やデータ、
技の練習法、
あらゆる人への参入のチャンス
ものすごい「人生ハイウェイの建設ラッシュ」を迎えている今、そんな時代を生きることについて
「構造化」してあるのが本書なのでは、と気づいた次第。
第四章は数式の「カッコの中のカッコ」のようで、ここはヘンだぞ、と思いながら何度も行き来した。
つづく