藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

本物の超一流。

世界に冠たるYKK
どんな高級ブランドも一目置く日本のメーカーが、今一度「高級以外」に挑戦するという。
「高級路線に逃げる」というのは、普通に考えれば「高級路線で勝つ」ということのはずだ。
もうその「高級路線」で勝負していればいい。
一定以上の利益も、ブランドとしてのプライドも保たれるはずだ。

あえて、そこから降りる。

一流のこだわりとはここにあると思う。
「富裕層相手のビジネス」という言葉はよく聞くが、「そこに逃げないビジネス」というのはなかなかない。
苦しいからだと思う。
そこに「あえて突っ込んで行く」というところが"超一流への関門"だと思う。
そんな超一流の挑戦者、に私はなりたい。

YKK「高級路線に逃げない」 ファスナー事業、中国に対抗

 YKKが高級路線を走ってきたファスナー事業で、中国企業に真っ向勝負を挑む。2日に発表した2020年度までの4カ年計画にアジアで低価格品を強化する方針を盛り込んだ。日本企業はコモディティー(汎用)化のわなを避けるため高付加価値領域を強化する事例が多い。YKKはむしろ中国勢が攻める土俵に乗り込み、ファスナー世界首位の地位を固める。

 「スタンダードに挑戦する」。都内での記者会見で吉田忠裕会長は宣言した。20年度までの設備投資は2770億円で、うち5割強をファスナーにあてる。20年度の販売本数を約129億本と、16年度見込み比5割増やす。最大の伸びしろが中国・アジアで普及している低価格の洋服やカバンに使うファスナーだ。

 ファスナー投資の6割は中国・アジア向けだ。アパレル企業が相次ぎ進出するバングラデシュベトナム、インドで約130億円を投じて工場を増強。生産能力を5割以上増やす。中国・アジアの開発拠点を10カ所から15カ所に増やす。この地域の開発人員を4割増の460人にする。

 YKKのファスナーは8割が中高級品だ。「1万回開閉しても壊れない」といわれる品質を売りに、米リーバイスや独アディダスなど大手ブランド品に「YKK」の文字を刻んできた。欧米の高級ブランドだけでなく、宇宙飛行士の服や車の座席にも使われる。

 それでも低価格帯を攻めるのは、中国勢の追い上げに強い危機感があるからだ。YKKの世界シェアは金額ベースで推計4割超だが、本数では2割。残る8割の半分以上は中国勢が供給する。YKKも約80年前の創業時はいまのように70カ国・地域に展開するとは思われていなかった。大谷裕明副社長は「いつ第2のYKKが出てきてもおかしくない」と語る。

 これまでもファストファッションの台頭にあわせて、材料の配合を見直すなどコスト低減に努めてきた。だが、もともと利幅が小さい低価格品では効果を十分に引き出せていなかった。16年度の販売数は12年度比で12億本増える見込みだが、汎用品が期待通りに伸びず、目標の100億本には届かなかった。

 猿丸雅之社長は「今ある商品のコストダウンには限界がある。『引き算』ではなく『足し算』の発想で商品をつくる」と強調する。製法や材料を見直し、中国製と同じ価格水準でも利益を出せるモノづくりを目指す。

 「技術の総本山」(吉田会長)と位置づける富山県黒部市では新たに製造ラインへのロボット導入を研究するセンターを開き、コスト圧縮につなげる。ファスナー専用の機械を内製している強みをさらに高める。黒部市では外国人の技術者を3カ月から3年の期間で研修生として受け入れる取り組みも開始。アジア人材の発想を製品開発に取り込む。

 「ハイエンドに逃げない」。吉田会長は繰り返し口にしてきた。世界中の洋服にYKKブランドを浸透させてきたトップランナーは、「安さ」への挑戦でさらなる高みをめざす。(小川知世)