藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

リセットの秒読み。

地方紙が書いた記事を日経が再掲。

(福田康夫元首相が)
「すり寄る人もいる。能力のない人が偉くなっており、むちゃくちゃだ。自民党が潰れるとき、役所も一緒に潰れる」と断言した。

記事中では「国士型」「吏員型」「調整型」と分けられているが、自分などから見ると「構図そのもの」に強い違和感を感じる。

多分。

多分だけれど「かつてない形の政治」とか行政が必要な時期に来ているのだと思う。
ITが革命的に生活に変化を及ぼすだろう、これからの数十年に政治も行政もまるでついてきていない。

憲法改正とか岩盤規制とか、経済制裁とか。
そういうテーマが「まるで陳腐」に見えるのは、それだけ時代の変わるスピードが速くなっているからだと思う。
皮肉にも、「今舞台上にいるプレイヤー」が最もそのことを分かっていないのだ。

だから「自民党が潰れる時に、役所も一緒に潰れ」てくれるのはリセットとしては絶好の機会だと思う。

自分も最近は福祉や介護の仕事の関係で「厚労行政」を目の当たりにすることが多いが、その「組織の多さと非効率さと規制の山」を見ると本当に目がくらむ思いがする。
そしてそれに追従して事業をなんとかしようとする民間企業が続く。
「今更どうしようも無い」とよく高級官僚が口にするからこそ「いつかのリセット」が待望されているのだと思う。

一時は痛みがあるだろうけれど、積極的にガラガラポンだと思う。

変わったのは政官関係か(風見鶏)

 「国家の破滅に近づいている」――。共同通信が8月初めに配信したインタビュー記事が霞が関で話題になっている。刺激的な発言をしたのは福田康夫元首相だ。地方紙にしか載らなかったので、ご存じない読者のために紹介しよう。

 安倍政権が内閣人事局を新設して官僚人事の決定権を首相官邸に法的に一元化したことを「最大の失敗」と批判する内容だ。

 「すり寄る人もいる。能力のない人が偉くなっており、むちゃくちゃだ。自民党が潰れるとき、役所も一緒に潰れる」と断言した。

 加計学園問題で「行政がゆがめられた」と語った前川喜平前文科次官は官の側だが、福田元首相は政の側だ。その人が不正とみる。安倍政権に批判的な人は我が意を得たりだろう。

 いま官僚人事は適材適所になっているのか。連立を組む公明党山口那津男代表に尋ねた。「一元的に集約して本当にやりきれているのか。よく考えていただきたい」との答えだった。

 官僚自身はどう考えているのか。某省幹部に聞くと「政治主導はいまに始まったことではない」と反論してきた。官僚が好き勝手に振る舞えたのは、天皇直属の臣下だった戦前の話であり、官僚主導なんぞ、とうの昔に消え去っていたという解説だった。

 確かに政治が官僚人事に介入することは、以前からよくあった。田中角栄首相は大蔵省の次官待ちだった主計局長を国土庁に追い出し、ウマが合う主税局長を取り立てた。細川護熙首相の時代には、熊谷弘通産相が同じく次官待ちだった産業政策局長に唐突に辞職を迫る騒動があった。

 政官関係に詳しい立命館大の真渕勝教授の『官僚制の変容――萎縮する官僚』などの論考によれば、官僚の思考・行動様式は図に示した流れで変化してきた。

 政治主導か官僚主導かだけが注目されがちだが、官僚が社会との距離をどう捉えているのか、すなわち政策判断を役所だけでするのか、利益団体などの意向をくみ上げようとするのかも変化してきたそうだ。

 戦後しばらくの国士型官僚の代表例は、農林省小倉武一通産省の佐橋滋らである。佐橋に想を得た城山三郎著『官僚たちの夏』を読んだ方もおられよう。

 自民党政権が長期化すると、役所と族議員が一体となって利益の配分を差配する調整型が登場する。さらに政治主導が強まると、調整は議員に委ね、言われたことしかしない吏員型に変化したという分析だ。

 今年夏の官庁人事を日経新聞は「官邸の意向、色濃く」と書いたが、「官邸色薄く」と評した新聞もあった。安倍政権は政治主導の流れに乗っただけなのか、劇的に加速させたのか。定量的に測定するのは結構難しい作業である。

 政と官の綱引きは決着済みだったとすると、ヒラメ官僚が近年、急増したようにみえるのはなぜか。仮説を提示したい。それは「変わったのは官僚ではなく、政治だ」というものだ。

 政治取材を始めた三十数年前、記者と同じように国会議員のもとに通い詰める人々がいることを知った。当時全盛だった調整型官僚である。その動きは記者と同じように派閥単位で行われるのが普通だった。

 政策決定の修羅場ではいくつもの政官タッグがしのぎを削った。裏返せば、ときの首相の不興を買った官僚も、違う派閥の領袖の懐に入っていれば、たたきつぶされることはなかった。

 仮説が正しいとすると、再び政治権力が分散すれば官僚も官邸の言いなりでなくなるはずだ。証明するには「安倍1強」にもっと揺らいでもらう必要がある。(編集委員 大石格)