藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

儀礼とビジネス

*[ビジネス]文化はビジネスにあらず。
日経・春秋より。
人類学者マルセル・モースは未開社会の経済原理は「贈与と返礼」にあると説いた。
つまり「略奪」は良いことではなく、対立せずに「贈与」を受けた側は「それに見合う例を尽くす」ということだったという。

つまり「贈り物」をして「感謝を返す」という非常に倫理的な規範があったということらしい。

コラムはこれを関西電力の贈与の話に持っていく批判になるけれど。
 
それにしても「贈与は返礼を促す」いや「返礼を強要する」のだとすると、贈与を要求する側も、また贈与を意図する側もちょっと「未知なる何か」を期待してお互いに腹芸をしていることになって、実に曖昧なやりとりになる。
 
モースのいう未開社会だけではなく、現代社会でも後を絶たない「贈与と返礼」にはどうやら自分たちが昔から抱いてきた感覚があるようだ。
単なる贈与と返礼は美談だが、ビジネスではちゃんと切り離すルールがいい加減必要なのではないだろうか。
 
 
春秋
 
人類学者マルセル・モースは未開社会の経済原理は「贈与と返礼」にあると説いた。対立しがちな部族の間で、食料や財産が贈られ、受けた方はそれに見合う礼を尽くす。略奪的な振る舞いを慎む慣習として社会に定着した。しかし、返礼を怠れば平和の均衡は崩れる。
 
▼かつて、ニュージーランド先住民族マオリは、贈与された物にはハウ(霊的な力)が宿ると信じた。もし返礼できなければ、従属的な立場に落ちてしまうのだ。一見、無償で善意に満ちた贈り物は時に相手を支配する力に転じる。評論家の柄谷行人さんは著書「世界史の構造」で、それを「贈与による権力」と表現した。
 
▼では、この贈り物にはどんな霊力が作用していたのか。関西電力の役員らが、原発が立地する福井県高浜町の元助役から総額約3億2000万円もの金品を継続的に受け取っていた問題だ。国税当局の税務調査で不明朗な資金の流れが発覚した。元助役の資金源は原発関連工事を請け負う建設会社だった疑いがあるという。
 
関西電力はきょう記者会見し、受領者の氏名や受け取った金品の内容を公表する。「個人的なことについては一切答えない」との立場を軌道修正した。もし、未返却の品があれば、正直に申告し、博物館に寄贈したらどうか。「原子力村における贈与と返礼」なる企画展も有意義である。人類学的にも貴重な資料となろう。
 

経営はオリジナル

 
*[経営]マネるのではなく。
日経MJより。
日本企業には珍しく営業利益率の高い会社について。
トップのオービックの話を聞いて驚いた。
「ターゲットは中堅企業」「開発はすべて自社で」「販売は直販のみ」「ほとんどが新卒社員から」「営業とSE職はマルチで経験」。

 どれを取っても既存のセオリーとは違うことだが、その「逆張り」を徹底した経営者が成功している。

 
他の「アカツキ(ゲームソフト)」「東海カーボン」の戦略を見ても、誰もが思いつかないあり得ないものではない。
もちろん「逆張り」ばかりしていたものでもない。
それぞれ自分たちの持つ「持ち味」を分析し、そこに「工夫」をしていくことで「自分なりのオリジナル」を編み出していったことがわかる。
ということは自分たちの足元にも、そんなチャンスはあるのに違いない。
他の成功者のマネをするのではなく、「自分なりの独自性」を考えることに経営のヒントはありそうだ。
まだまだチャンスはいろんなところにあるのではないだろうか。
 
営業利益率5割超のオービック逆張り経営の秘密

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

欧米企業に比べ営業利益率が低いと指摘されることが多い日本企業。だが、営業利益率30%以上をたたき出す高収益な上場企業は東証1部だけでも62社(9月13日時点)ある。高収益を生み出す企業に共通する条件は何か。そこにはどんな秘密があるのか、探ってみた。
 

営業利益率、主要上場企業で6位

 
社員はほとんどが新卒採用でSEと営業、両方を経験する
オービックが大手IT企業と一線を画した戦略をとっている背景には、過去の失敗の教訓がある。オービックは現在は中堅企業をターゲットとしているが、実は2000年代中ごろから、大手企業にも販路を広げようとしていた。
 
規模が大きい大企業との案件では売り上げの上積みが期待できるほか、大規模なシステムを構築することで新たな機能や開発手法を編み出そうと考えた。ただその結果、多数のシステムエンジニアが必要になり、開発の外注も始めた。
 
これが裏目に出た。システム規模が大きくなれば発注企業からの要望も多くなる。中堅企業であれば相手先の担当者も限られ、開発過程のやり取りも多くはない。だが、大企業ではシステム開発に関わる担当者や部署が多岐にわたり、やり取りが煩雑になる。様々な要望や変更要請も寄せられるようになる。外部に開発を委託しているため、工程の管理も甘くなり、結果として不採算案件が発生した。
 
「事業を立て直してくれないか」。当時の経営陣からこう会社を託された橘氏は、07年に専務に就任した。まず、大手企業向け開発からの撤退を決めた。システムの細かい作り込みをやめ、外部に開発を委託せず、すべて社内で開発する仕組みに変えた。
 
システムエンジニアと営業担当を明確に分けて育成することをやめた。理系・文系を問わず職種別の採用をせず、入社後も社員がエンジニアと営業を担当するジョブローテションを取り入れた結果、「社員の担当替えは日常茶飯」(橘社長)だ。
 

代理店使わず直販営業維持

オービックでは営業でも販売代理店を利用せず直販体制を維持している。橘社長は営業のノウハウもすべて自社に蓄積することを狙った。ジョブローテーションで取引先とのやり取りも社内のコミュニケーションも円滑になる。一連の取り組みが業務効率を劇的に上げる結果につながった。
 
課題もある。中堅向けの市場が成熟化していることだ。システムのクラウド化など導入後の事業は今後も見込めるが、長期的に見れば新規顧客の獲得は難しくなる。海外市場はSAPなどが席巻し、日本とは競合環境が大きく異なる。
 
そこで狙うのが日本の大手企業だ。オービックにとっては経営効率が下がる市場だったが、構成をシンプルにするなど大型システムでも開発の手間を軽減できる仕組みを作ってきた。橘社長は「身の丈に合わず拙速だったと判断し大手向けから撤退した。それから10年間、体制を整えてきた。今は再び大手に販路を広げている」と意気込む。
 

スマホゲーム開発で営業利益率48%超

 
アカツキの塩田元規社長
10年にアカツキを創業した塩田元規社長は「ゲームの収益性はファン作りにかかっている。より多くの人に、より長く楽しんでもらうことが求められる」と話す。
 
スマホ向けゲームのコストは開発費の比重が高い。そのため、より多くのユーザーに、より長く遊んでもらえるゲームほど利益率が高くなる。
 
利益率を高めるためにアカツキが実施している戦略は3つある。まず、他社が既にIP(知的財産)を持つキャラクターを生かすものと、自社が生み出すオリジナルのキャラクターを展開する両輪でゲーム開発を回している。
 
例えば、他社IPではバンダイナムコエンターテインメントと「ドラゴンボールZ ドッカンバトル」の開発に携わった。世界的に有名なIPのゲーム化で製品はヒットした。「昔にはやったIPをスマホゲームとしてよみがえらせる。そのノウハウに強みがある」(塩田社長)

 
東海カーボンの長坂一社長
営業利益率30%を超える製造業は上場企業でも少ない。その中で、東海カーボンは18年12月期、売上高2313億円に対する営業利益が753億円、利益率が32.5%と急伸した。17年12月期が10.4%、それ以前は1桁台で推移していた。
 
突然、利益率が高まった要因は主力の黒鉛電極の需要が急増したことが大きい。価格が高騰し利益幅も大きく増えた。東海カーボン黒鉛電極の売上高は17年12月期の236億円から18年12月期は1021億円へと4.3倍に増え、営業利益も13億5000万円から560億円へと増えた。
 
黒鉛電極の特需の要因は主に2つある。ひとつは中国での需要が増えたこと。黒鉛電極は鉄くずを溶かして鉄をリサイクルする電気炉による製鋼で欠かせない素材。中国で環境規制が強化されたことなどで需要が急激に増えた。
 
もうひとつは、黒鉛電極の主原料でリチウムイオン電池の材料としても使われるニードルコークスが、電気自動車の市場拡大で高騰していることだ。東海カーボンだけではなく同業の日本カーボンの営業利益率も30%を超えている。
 
ただし、東海カーボンの場合、15年に実施した事業構造改革が功を奏した面もある。長坂一社長は「14年12月期の営業利益率はわずか3.2%。危機的な状況で、大規模なリストラを断行した」と振り返る。
 

特需に頼らない体制作り進める

同社は15年から数年かけて国内の黒鉛電極の製造拠点の生産能力を約4割削減した。代わって強化したのがタイヤの補強材に使うカーボンブラック事業だ。さらに、ドイツの炭素メーカーを買収し、海外事業を強化する。こうした一連の改革を進めていたところに黒鉛電極の特需が起きた。特需だけに頼らない体制作りを続ける。
 
オービックアカツキ東海カーボンはそれぞれ事業内容は大きく異なるが、高収益を生み出せる体質をいかに構築しておくか、そしてチャンスを逃さずつかんで結果を出した点で似ている。3社とも業界の常識にとらわれない施策を進めた結果といえる。高収益の秘密はそのあたりにありそうだ。
 
(企業報道部 宇賀神宰司)
 

お金がないから起こること

*[次の世代に]大前提として。
以前、「お金を追いかけることが人生を見失う」という話を何度か書いた。
すると「確かに。共感する」と言うメッセージとともに、倍くらい「金がない苦しさをわかっていない」「金を軽視しすぎている」「今の自分の(お金の)苦しさはとんでもない」「お前は裕福だから世の中のことがわかっていないのだろう」と言うメッセージを多数いただく。
 
まったく。
その通りでありました。
実は若者の間であまりにも「起業」「事業拡大」「IPO」「M&A」が流行っているので「それ」がゴールなのではないよ、と言いたかったのだけれど。
 
他方「お金」がないことでどれほどの苦労があるか。
確かにその通りで、お金が原因でかなりの事件が起こっているのは紛れもない事実。
「お金なんて追わなくてもやっていけるはず」というのは一部の人たちへのメッセージでした。
俗に「世の中の問題の八割は"金"で解決できる」ともいう。

 お金は、実はそれほど大事なものでもある。

それはそう。
だから「それ」に血道をあげて生きる人もいる。
けれど「それ」より大事なものもあるのだよ、と若い人に一言いいたかったのだ。
80をすぎてなお、貸金庫に現金を貯める趣味の老人がいるのだから。
 
お金は非常に大事だがすべてではない、という誠に仏話的なお話なのでした。
 

悪い話を進んで聞く

*[次の世代に]警告するカサンドラを。
FTより。
日本でも欧米でも「隠蔽」をめぐるスキャンダルは日々事欠かない。
不正や犯罪を見つけた時に「告発するか、黙認するか」は大きな違いだが、黙認して問題がそのまま解決することはほとんどない。
だから「悪い話」こそトップに伝わるような配慮がとても重要だと思う。
簡単なことだけれど、つまり「犯人を吊るし上げない」「告発者を暴かない」「そもそもの原因を考える」というような基本的なことができていれば、それほど組織は腐らないものだ。
だが記事にあるように、人は「よくない報告を持ってきた人に好印象を持たない」側面もあるという。
だから「よくない話をする部下」はことさらに大事にしなければならないということでもあるだろう。
また気をつけたいのは「あいつ、リーダーに逆らってますゼ」とばかりに「他人を貶めて自分のポジションを上げようとするタイプ」の人である。
 
つまり、よくない話を聞いた時には「冷静に歓迎する」ということが必要なのだと思う。
 
[FT]誰が悪い話を上司に伝えるか
 

Financial Times

職場で何か問題に気づいたら、責任者に連絡しようとするだろうか、それとも黙っておこうとするだろうか。

 
ブラックストーンのシュワルツマン氏はある出来事をきっかけに、投資を決める際には好ましくない情報もすべて出してもらい、全員で徹底的に議論するようにしたという=ロイター
このような問いが頭に浮かんだのは、シェアオフィス「ウィーワーク」を運営する米ウィーカンパニーで9月下旬、9年前に事業を立ち上げた創業者の一人であるアダム・ニューマン氏が最高経営責任者(CEO)の座を追われたからだった。
 
米紙ウォール・ストリート・ジャーナルはその1週間前、ニューマン氏が昨年夏に自家用ジェットでイスラエルへ行った際の出来事を取り上げていた。飛行機が目的地に到着し、ニューマン氏が友人らと連れ立って降りた後、帰りのフライト用に置かれたシリアルの箱の中に「かなりの量」のマリフアナが詰め込まれているのを乗務員が発見したという。ジェット機のオーナーが動揺し、機材を引き返させたことから、ニューマン氏はニューヨークへ帰る方法を別に探さなければならなくなった。
 
つまり、その乗務員は沈黙しなかった。職場で悪い知らせを受け取った人間が反射的にどのような対応に出てしまうかを考えれば、勇気ある決断だったといえるかもしれない。われわれは大概、凶報の伝達者を責めるものだ。
 
この残念な傾向に関する比較的新しい研究として、現金2ドル(約220円)が当たる可能性があると被験者に説明した上で、当落結果を知らせる実験が行われた。外れた人は当たった人より、結果を伝えただけの人のことが「かなり」嫌いだと回答した。架空の空港カウンター職員が搭乗時間について予定通りか2時間遅れになるかを伝える別の実験でも、結果は同じだった。
 

がんを伝えた医師への好感度は低い

この研究論文の著者が米誌ハーバード・ビジネス・レビューに寄稿した通り、結果はハロー効果(光背効果)とは関係がないようだ。ハロー効果であれば、悪いニュースを知らされて気分を害すと、誰でも近くにいる人に当たり散らしたくなる。さらに調査を重ねることで、嫌悪感を抱くのは悪い知らせを持ち込んだ人に対してであり、たまたま周囲にいる人ではないことが示された。
 
この結果は特に、悪い知らせでも患者に伝えざるを得ない医師にとっては心穏やかではいられないものだ。皮膚生検でがんが見つかったと言われた被験者グループでは、問題なしの場合の被験者グループに比べ、結果を伝えた医師への好感度が著しく低かった。しかも前者では、がんが見つかることを医師がかなり望んでいたようだと発言する確率も高かった。
 
哀れな伝達者を責めたくなる衝動は我々の中に深く根付いているため、論文の著者によると対処法は2つしかない。悪い知らせの本題に入る前に、相手の立場を思いやるからこその報告だと伝えること、もしくは伝達役を他の人に任せることだ。
 
筆者には、過去に職場で悪い知らせを上司に伝えたところ、逆に上司に食ってかかられた知り合いが何人かいる。彼らにいずれかの対処法が役に立ったとは思えない。とはいえ(過去に発生した問題より)進行中の問題を上司が認識する方がずっと好ましいことを理解するのに、会社経営の達人である必要はない。
 
インテルの会長兼CEOを務めた故アンディ・グローブ氏は、さまざまな企業のトップに対し、たとえ比較的低い地位の社員であっても業界の変化を早期に警告する「カサンドラギリシャ神話に出てくる予言者)」を社内に養成するよう、よくアドバイスした。
 

1人に独断で承認させない

投資ファンド大手ブラックストーン・グループの共同創業者であるスティーブン・シュワルツマン会長兼CEOも、最近出版した回想録「必要なこと――卓越の追求から学んだ教訓」(邦訳未刊)の中で、悪い知らせを受け取ることの重要性を示唆する逸話を紹介している。1989年のこと、社内の若手パートナーが米東部ペンシルベニア州フィラデルフィアにある鉄鋼会社の買収を強力に主張した。年長のパートナーは大失敗すると警告したものの話はそのまま進み、買収は成立する。ところが鋼材価格の低下でその会社は大赤字を出した。シュワルツマン氏はある投資家のニューヨークのオフィスに呼び出され、激しい叱責を受けた。
 
「彼は私に座るよう促してから、こちらに向かって『お前は全くの無能か、単なるばかか』と叫び始めた」。延々とまくし立てられ、「私は泣きそうになるのをこらえなければならなかった」と言う。
 
シュワルツマン氏はこの経験を踏まえて社内の意思決定方法を見直し、誰か1人が独断で取引を承認することがないようにした。新たな投資案件は大人数の会議で徹底的に議論する。全員で隠れたリスクを精査し、出てきた質問には提案者に必ず答えさせるのだ。
 
さらにシュワルツマン氏は、表だって声は上げなかったものの鉄鋼会社の買収に反対したアナリストが少なくとも1人いたことを後で知り、地位のあまり高くない社員とも直接、対話する決意を固めた。
 
こうした教訓を生かすことができるのは、米金融大手ばかりではない。既に教訓を得た上司の下で働いているなら、それは運が良い。
 
By Pilita Clark
 
(2019年9月30日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/
 

ニュータイプの時代

*[この一冊]変わる価値観。

昨年読んだ中で一押しの一冊。

軽いタッチで、しかも各章にまとめがされているという参考書のような体だが、中身は驚くような「思考の転換」を示唆している本だった。

一見なにやらのHOW TOものに見えるがさにあらず。

自分は大事な部分にマーカーしていたら、実に七割がたがマーカーで埋まってしまっていた。

久々に出会った良書だと思います。 

ニュータイプの時代 新時代を生き抜く24の思考・行動様式

ニュータイプの時代 新時代を生き抜く24の思考・行動様式

 

 良本は数あれど、一生でめぐり合うのはよくて十数冊ではないでしょうか。

(その十数冊のために「気の遠くなる読書」をしているのかと思うとゲンナリもしますが、だから読書はよいのでしょう)

自分にとっては「七つの習慣」「web進化論」以来のインパクトでした。

ところでいくら良書に出会っても、実際に「行動が変わる」という機会はあまりありません。

その意味で「ニュータイプの時代」はあくる日からの自分の思考様式を変えてしまいました。

「これまで正解とされてきた知識」「これまでは当たり前とされてきたスタイル」が次々と打ち砕かれ、ここ数年自分が「どうもうまくいかないな」と思っていたことの大体が説明できたような気がしました。

まさに「ニュータイプの登場」を意識できているのといないのでは、自分の反応が180度変わることを実感しました。

今年の自分は、このニュータイプの価値観を極力追いかけることを心がけたいと思っています。

今年の予感

*[年頭所感]若者の時代。

あけましておめでとうございます。

今年はどんな年になるでしょうか。

 

昭和のラベルであった「高度成長期」はともかく。

昭和の後半から平成へと、時代のイニシアチブは実質「60歳以上」の世代が握ってきたと思います。

政治家の多くはその年代の人たちが中心にいました。

いや今もいます。

この間に変わった最大の環境といえば「ネット」ですね。

年寄りの時代にはなかったネットが今はすでに張り巡らされています。

つまり「発言力」は急速に「均等化」されようとしています。

「大人が隠し、押さえつけていたこと」はこれからは通じないでしょう。

80歳の爺さんも、50歳の大人も、18歳の若者も「本当にタイマン」に発言する社会の到来。

これまでの「こけ脅し」「ごまかし」が通じません。

 

若い彼らは存外に鋭いセンスを持っています。

大人の嘘なんて見抜いて、本当に共感できることにだけ賛成するでしょう。

一部の団体に阿(おもね)るようなこともなく。

新しい民主主義はネットとともに始まりそうな予感です。

 

本年もどうぞよろしくお願いします。

今年の終わりに(2)

*[振り返り]本当の働くこと。

今年一番感じたことといえば「働く自由人」と数多く出会ったことである。

働き方改革、とかいう話ではなく本当に「自由に働く人」のこと。

自分の価値観やルールに従って、粛々と我が道を行く、と言えばいいだろうか。

フリーランスはもちろん。

不動産投資をしている人や、ミュージシャン、料理人、起業家などなど…

特に二、三十代の若手や熟年の起業家の人たちは「自分のやりたいことをひたすら追求する」という態度が顕著だった。

だらだら遊んでいるのでは決してないが、「趣味と学びと仕事」をごちゃ混ぜにしていて、そして「かなり楽しそうな印象」が特徴だったと思う。

自分のやりたいことと、仕事と趣味と、プライベートも重ね合わせるような余裕が出てきた時代なのかな、と思っている。

折しも人工知能の台頭で「手間仕事はほぼ消滅する」ことがリアルになってきた一年でもあった。

ひょっとしたら来年の2020年くらいが「AI元年」などとあとから言われるのではないだろうか。

 

本当の働き方改革は、実はひっそりと始まっているような気がする。

今年の終わりに(1)

*[振り返り]アウェーに学ぶ

毎年、年末になる二日ほどはその年を振り返るのが自分のくせらしい。

昨年はこんな感じで健康のことばかり書いていました。 

why-newton.hatenablog.com

で今年は何と言っても、複数の福祉施設で実習を受けられたことが一番のトピックでした。

これまでも老人ホームやデイサービスへはしばしば訪問していましたが、

 「利用者の立場」で施設を見ているのと「提供者の立場」でいるのではそれこそ180度立場が違う、ということが実感できました。

また「提供サイド」から見た高齢化社会とか、高齢者ご本人の人生観・健康観・家族観などの様々な価値観について、また現在の日本の福祉制度についても実に考えることの多い一年でした。

 

そして、あと20年もすれば「後期高齢者」になる自分世代がどのような人生観・死生観を持っていなければいけないのか、ということをはっきり意識するようになりました。

何事も「現場がすべて」と言いますが、現場を見ずしてはどんなに優れた戦略も"魂"が入らないのだ、と改めて思っています。

現場に、アウェーにすべてのヒントがあることを再確認した一年でした。

 

いろんな今更ビジネス。

*[ウェブ進化論]後払い。
日経MJより。
ネットが普及して「後払い」が人気だという。
「NP後払い」なんて会社はやっていけるのか?と思っていたらとんだ勘違いをしておりました。
今までの先払いやクレジット決済に潜む微妙な不安感が払拭されて好評だという。
こんな「あったりまえ」とも思えることも技術革新とともに十分ビジネスになる時代。
だから発想は続いて「なんでも後払い」はどうか。となる。
クレジットカードはなんの新味もないビジネスだけれど、「ネット上だからこそ」改めて必要になる「これまでのビジネス」がありそうだ。
 
なんでもアナログ…とかなんでも対面…とか。
改めて自分たちが「今欲しいもの」を点検してみると意外なチャンスがあるかもしれない。
キーワードはどうも"安心"にありそうだが…
 
  ECは「開けてから決済」 初めて利用でも安心 
 

段ボールから取り出したワンピを着るとサイズ違いであった――。電子商取引(EC)での買い物は手軽で便利な半面、試着ができずに商品が届くまで確認ができないという弱点もあった。これを解決する手段として登場したのが「後払い」の決済だ。品物を受け取って内容を確認した上で、後日コンビニなどで現金払いができる。利用者数も年々増加中。代金引換やクレジットカード払いとは違う「安心」を求める声が、そこにはある。
 
決済サービスを提供するスタートアップのネットプロテクションズ(東京・千代田)が展開する「NP後払い」はECで注文した商品と一緒に支払伝票が届く。伝票をコンビニや郵便局に持ち込むことで支払いができる。代金を支払う前であれば、返品を届け出て、所定の住所に商品を返送するだけでいい。

 
    NP後払いはファッションや食品、ギフトなどの各社ECサイトで利用ができる   
「商品を手にとって、確認したあとに支払える安心感がありますよね」。後払いサービスを使った通販を楽しむ30代の女性は話す。買い物はしたいが、実店舗に行く時間がない。だがECだと画面上の表示と色味やサイズ感が異なる商品が届くこともある。代金引換や銀行振り込み、クレジットカード決済などを利用すると、いちいち代金を取り戻す面倒な手続きをする必要があった。
 
利用者の40代女性は「初めて利用する会社や聞いたことがない業者は後払いを利用する」という。実物を手に取れない、というこれまでのECの弱点を克服できるサービスだ。また、代引きでは使えない「宅配ボックスが利用できる」という理由で後払いを積極的に使うというユーザーもいた。
 
ネットプロテクションズは2002年に後払い決済を国内に導入し、現在4万社以上のECサイトで活用できる。18年度はのべ4300万人が利用し、合計2500億円を決済した。前の年度から1000万人増えた。「EC市場の成長にあわせて利用できる店舗が増えてきたのが要因」(広報担当者)という。
 

クレジットカードの分析サイトを運営するTIプランニング(東京・新宿)の試算によると後払いの市場規模は、15年の約4000億円から毎年120%の成長率を維持し、20年には7000億円を超える市場規模になるという。
 
後払いサービスは、学生や主婦などのクレジットカードを持ちにくい層が活用する例が多い。そこで登場したのが人工知能(AI)を使った限度額の判断だ。
 
伊藤忠商事などが出資するペイディー(東京・港)は、購入額が限度を超えているとAIが判断した場合は受け付けを拒否する。対応するのは、旅行予約サイトなど約70万サイトだ。
 
高級ブランド品など換金性が高い商品の購入では審査を厳しくしているほか、支払いが遅れた会員は限度額を引き下げる。同社の広報担当者によると、「購入時に入力する電話番号などから過去の支払い事故がないかの確認もできる」という。
 
キャッシュレス化の進展で、手間が多い現金を使う機会は減っているように感じる。一方で、ECでほしい商品を確実に手に入れる手段としては現金を使った後払い決済に根強い支持が集まる。「安心」を求める活用例が増えそうだ。
 
(矢野摂士)

スマホ・コーチ

*[ウェブ進化論]学びの促し
日経より。
英会話にITにコーチングビジネスが流行っているという。
さてそういえば学んでおきたいことって実は結構あるわけで。
連休や正月に「今年はこれを」というのはもう何回繰り返えされたことか…
そしてあの休み明けの無力感といったらひどいものがある。
 
考えてみればこれってスマホと相性ぴったりだ。
変にAIを使って、とまで言わずとも、いやAIが世界中の「学び」を連携してくれているのなら、本当に自分にとっての「最適学習法」が見つかるかもしれない。
 
そうなるとなんだか「大学に入り直す」とかいう話になってしまいそうだが、それとてスマホで十分だろう。
何を学びたいか、は「何をしたいか」ということを考えるきっかけにもなるだろう。
スマホ時代は「学びの幕開け」になるのじゃないだろうか。
 
 
学びの秋 コーチと実践 英語・IT…計画を共有
 

 
「プログリット」では市販の教材を組み合わせて学習内容をコーチが提案する
夏が終わり、新しいことを始めるのにぴったりな涼しい季節がやってきた。書店に平積みされた英語やプログラミングの入門書に興味を抱く人もいるだろう。ただ、1人で始めるには「三日坊主」が心配だ。目標を達成するため、自分専用の「コーチ」を付けることがおすすめだ。コーチを活用し、計画的に勉強する方法についてまとめた。
 
監査法人で働く30代男性の宮本和志さんは、半年後に海外支社に異動することが決まった。現地のビジネスで通用する英語力を身につける必要があったが、「独学ではやりとげる自信がなかった」と話す。英語教材の種類があまりに多く、何をやればいいのかわからなかったからだ。
 

コーチと二人三脚で目標達成に向けた計画を共有

宮本さんは、コーチを付けて学習することを決めた。教育スタートアップのプログリット(東京・千代田)が運営している英語力養成プログラム「プログリット」に応募した。選んだのはビジネス英会話コース2カ月のプランで税別料金は32万8千円(ほか入会金5万円)。一人ひとりのレベルに合わせてコーチが指導する形式が特徴だ。
 
コーチを使う学習では、スケジュールの管理や質問への回答をお願いするのが一般的だ。メールやSNS(交流サイト)を使って頻繁に連絡を取り、勉強した内容や感想をコーチに報告。わからないことがあれば質問し、コーチからアドバイスをもらう。「毎日報告を続ければ、三日坊主になりにくくなる」(プログリットの兵頭由以加さん)

 
div新保麻粋さん
――独学や講義での学習に比べ、コーチとの学習にはどんなメリットがありますか。
 
「コーチを使うと、自分の能力に合わせて計画的に学習できる点が優れている。講義中心のスクールでは一定のペースで授業が進み、一度つまずくと追いつくのが難しい。独学では計画通りに進めるモチベーションを保ちづらい。コーチは両者のいいとこ取りといった形だろうか」
 
ビジネスパーソンは仕事や会食などで忙しく、勉強に費やせる時間は多くない。だからこそ、少ない時間で集中的に学ぶことが大切だ。専門知識をもち、計画立案の能力で優れているコーチを頼りにして、限られた時間を効率的に活用してほしい」
 
――コーチを活用する上で、何か心がけておくべきことはありますか。
 
「まず、分からないことは何でもコーチに聞くようにしてほしい。とりわけ学び始めの時期は、分からないことが多いのにもかかわらず、質問をためらいがちだ。恥ずかしがらずに教室でコーチを捕まえて疑問点を解消してほしい。面と向かって話しにくいならテレビ電話でもいい」
 
「例えば、プログラミングの学習は、初心者の時期が一番大変だ。『最初の山』が最も挫折しやすく、私たちもコーチとしてサポートを強めなければいけない段階だ。だが、そこを乗り越えれば学習が楽しくなる。初心者こそコーチを思う存分、使いつくして山を越えてほしい」
 
――頼りになりますが、甘えすぎてしまいそうです。
 
「プログラムの中盤からは、コーチとの契約が終わった後の勉強を意識してほしいと伝えている。『テックキャンプ』の終了は新たな始まりだ。キャリアを高めるためにはその後も継続して学び続けることが必要になる」
 
「コーチから卒業した後は、自分で教材を選び、計画を作っていく必要がある。いつまでもコーチは一緒にいられないが、卒業後も活躍してほしいという思いがある。私たちと学ぶ中で、計画作りや教材選びのノウハウはどんどん盗んでほしいと思う」
 
(堺峻平)

楽しめない日本人

*[文化]なんでもお祭り。
日経より。
ピエールさんからは、仮装してワインを飲みながら42.195キロを走る「メドック・マラソン」のことも教えてもらいました。

 ええっ。

そんなことをして死人が出たりしないのだろうか。
そういえばフランスという国はサッカーにせよ自転車にせよ、スポーツをお祭りにして産業化するのが上手い。
商才に長けているのか、それとも伝統のなせる技なのか、大したものである。
 
日本にだって伝統はあるが、産業と言えるほどのものが見当たらず、それが「日本らしさ」ということなのだと思う。
逆にフランスは「なんでも楽しんでしまう」という関西人みたいな気質があるのかもしれない。
それにしても「フルに完走したらその後にフレンチのフルコースがいただける」とはなんともユーモアのある企画だ。
思わず参加してみたくなりました。
 
1998年に仏でサッカーW杯取材
 
 1998年にフランスで開催されたサッカーワールドカップ(W杯)を日本のテレビ番組向けに取材・リポートすることになった。
 
東京とパリを数カ月ごとに行き来しながら取材・執筆するライフスタイルが本格的に始まったころのことでした。NHKから98年の6~7月にフランスで開かれるW杯の様子をBS放送の番組向けに取材してほしいという依頼が来ました。試合会場や開催地の様子をその地方の歴史や名物料理の紹介と共に現地からリポートしました。

 
サッカーW杯をきっかけに、取材のフィールドが広がった(フランス代表のブラン選手=左=と)
日本でも人気だったジダン選手やブラン選手など、フランス代表のメンバーにも取材しました。試合前の緊張感や試合後の解放感に浸った選手たちの様子を間近で見られたのは、得がたい経験でした。
 
パリ育ちの私にとって、W杯の取材は行ったことのなかったフランスの地方都市を知る貴重な機会になりました。日本のおかげでフランスのことをより深く知ることができたのです。何より主催国のフランスが前大会の覇者ブラジル代表を破って優勝した歴史的な瞬間に立ち会うことができたのは、ジャーナリストとして幸せなことでした。
 
その次の2002年の日本・韓国共催の大会でも、フランスのテレビ局「TF1」の番組で日本からリポートすることになりました。おかげですっかりサッカーファンになり、W杯だけでなく欧州選手権(ユーロ)にも注目して応援するようになりました。
 
 W杯をきっかけに他のスポーツの取材もするようになった。
 
フランスでのW杯の取材で仲良くなったカメラマンのピエール・コールさんから「ツール・ド・フランスの取材をしないか」と誘われました。日本でも人気の3週間にわたる自転車レースです。
 
下り坂では時速80~90キロメートルのスピードが出る迫力あるレースの様子をバイクの後ろに乗って並走したり、追い越して次のポイントまで先回りしたり、というスリリングな取材でした。アルプスの山越えで目にした絶景は忘れられません。
 
ピエールさんからは、仮装してワインを飲みながら42.195キロを走る「メドック・マラソン」のことも教えてもらいました。メドックボルドーの北部に位置するワインの名産地です。コースの中ではワインを醸造しているシャトーにも立ち寄ることになっています。豪華なシャトーでの「給水」ポイントでは、水だけでなくメドック産のワインが提供されます。
 
当然、ゴールするころには皆、ほろ酔いです。コースを進むにつれて、水やワインの横には前菜や肉料理、デザートなども並べられるので、完走すればフレンチの「フルコース」を堪能できるという演出です。
 
このユニークなマラソン大会の様子は雑誌「ターザン」で紹介しました。ツール・ド・フランスのことも東京新聞に寄稿するなど、取材のフィールドが広がっていきました。
 
長谷川聖子)

先送りのけじめ

*[税制]次の世代に。
およげ!たいやきくん」は課税されなかった…て。
もう50年も前の話。
童謡か歌謡か。
無税か課税か軽減か(なんやそれ)。
贅沢品か否か。
税率は何%か。
 
中世から遡ってみても、世の東西で「税制度」が完成を見たことはない。
もし「この税制が最適」みたいなものを設計できればノーベル賞に輝くのは間違いないだろう。
またどうやって評価するかは微妙なところですが、せめて先進国でコンペくらいしてはどうだろうか。
北欧の税制を参考にして…とはよく聞くが、その方向性は一向に見えてこない。
戦後いろいろな局面があったとは思うが、50年経ってもまだ8%だの10%だの5%だのとまったく議論が進んでいないことに嘆息する。
 
政治家は何でも「あれを推せばこれがマズい」と玉虫色にしてしまうが、正面切って話をするべき。
(いや意図してわかりにくくしている部分もありそうだ。
でもこれからは「そういう時代」ではなくなるのじゃないだろうか。
30年ほど経った今の三十代以下の人たちは、そんな分かりにくい議論に付き合わないような気がしてならない。
ズバッと「税金は三割、ベーシックインカムと公務員と政治家は十分の一で」みたいなことを言い出すのではないだろうか。
時代を待つしかなさそうだ。
 
春秋 
「たいやき」はゼイタク品か否か。1970年代の半ばごろ、こういう論争があった。といっても実際にアンコの入った鯛(たい)焼きではなく、当時、大いに売れた「およげ!たいやきくん」の音盤に物品税をかけるかどうかで、国税当局とレコード会社が対立したのである。
 
▼物品税は毛皮や宝石など「奢侈(しゃし)」とされるものを対象としていた。何がゼイタク品で、どれだけ課税するかがこまごまと定められ、一般のレコードは15%だが童謡は非課税だった。しかし大ヒット曲を前に、国税はこれは大人向けの歌だと迫り、レコード会社はあくまでも童謡だと譲らない。結局は会社側の主張が通った。
 
▼似たような混乱が、客と店とで起きなければいい。きょうから消費税は10%。ただし食料品などは8%のままである。コンビニやファストフード店での持ち帰りは軽減税率、店内飲食は対象外だが、線引きは難しい。テークアウトで買って、気が変わる人がいるかもしれぬ。矢面に立つのは、国税ではなく店のスタッフだ。
 
▼「たいやき」の時代、物品税をめぐるゴタゴタは絶えず、それが「広く浅く」の消費税導入を促した。一件落着のはずだったが、いまや新たな線引き問題に頭が痛いから皮肉なものである。そうだ、鯛焼きといえば、あれも店先に腰掛けて食べたら税率10%、目の下三尺の本物の鯛も買って帰れば8%。いやになっちゃう?

コードのない世界

*[ウェブ進化論]すべてを充電。
日経MJより。
いつの間にか自分のiPhoneもワイヤレス充電になっているが、これが加速するという。エネルギー業界は「電気」の一人勝ちの様相だが、それは「充電との戦い」でもあった。環境によくないと思いつつも乾電池を使ったり。
いつの間にか「ケーブルの奴隷」と化していた我われが解放されるかもしれないという朗報だ。
それにしてもいずれは「宇宙(衛生)で発電し街中に給電する」ということにまでなれば、まるで様子が変わりそうだ。車も電車もまるで永久機関かと勘違いするような世の中になるらしい。
新幹線はさらに早く走れるのではないだろうか。
改めて技術というものの凄さを感じるクリスマスなのでした。
 
 
衛星から届け電力 未来の技術「無線給電」開発競う
 
2019年10月1日 2:00
 

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

遠隔から無線で給電できる技術「無線給電」の実用化に向け、パナソニックなど電機大手やスタートアップ企業がしのぎを削っている。工場で稼働するセンサーの電池交換が不要になるなど、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」の生産設備への導入が加速する。将来は宇宙に太陽光パネルを打ち上げ電力をマイクロ波で地球に送る技術にもつながりそうだ。

 
無線給電はスマホ向けで採用が進んでいる
センサーの電池やケーブルが不要に
 
「ケーブルや電池のいらない、工場のIoT化を進められる」。パナソニックマニュファクチャリングイノベーション本部の梶原正一主任技師はこう強調する。同社がいま開発しているのは、電力を携帯電話の通信や電子レンジに使うマイクロ波に変換して送受信する技術だ。電源ケーブルがなくても遠隔から無線で電波を送り、受信側で再び電力に変換できる。
 
現在実用化されている無線給電はスマートフォンを充電器の上に置くシステムが一般的だ。一方、パナソニックが開発している無線給電技術は、数メートルと送信側と受信側の距離が離れていてもマイクロ波に変換することで電力を送れる点が特徴だ。
 
「例えば、工場に取り付けて品質管理に使うセンサーに活用できる」と梶原主任技師は話す。半導体や化学品は温度や湿度に敏感で、工場では製品が劣化しないように室内環境をセンサーで調べている。
 
マイクロ波を発信するアンテナを工場内に取り付けることで無線でセンサーに給電ができるようになるため、センサーの電池交換が不要になる。IoTの活用に向け、2020年度をメドに実用化する考えだ。

 
電気自動車向けの無線給電の実用化が期待されている(2018年、北九州市での展示会)

配線が困難な場所にも送電可能に

スタートアップ企業のスペースパワーテクノロジーズ(SPT、京都市)は工作機械の異常検知センサーに活用する。例えば、金属を加工する機械にはドリル付近に振動センサーが付いており、ドリルの異常な振動を検知して故障を予知するという機能がある。センサーの駆動には電池が使われており、頻繁に交換する必要がある。
 
ここにSPTの技術を導入すれば、電池を交換する必要がなくなる。また、家電やIT(情報技術)機器の部品を置く棚には、従業員が部品を取り出すなど作業の実行を確認するために表示器のボタンがあるが、これも無線給電に置き換えられる。「空間をうまく使い配線が困難な場所でも電力を送れるようになる」と古川実社長は強調する。SPTには関西電力が出資するなどエネルギー大手も無線給電技術に成長を見いだしている。

 
パナソニックなど大手メーカーも無線給電システムの開発に余念がない
マイクロ波による電力の送受電は技術的には宇宙ビジネスに応用が可能とされている。宇宙空間に太陽光発電パネルを打ち上げ、発電した電力を地球に送る。地球に巨大なアンテナを設置しておけば受電が可能になる。1960年代から米国を中心に研究されてきたが、80年代以降は日本が推進役を担ってきた。
 
宇宙システム開発利用推進機構は19年、ドローンにマイクロ波を飛ばす実験をした。ドローンが移動しても問題なく地上から送信できるかを確かめた。経済産業省は地上や宇宙での実証を通じ、50年ごろに宇宙太陽光発電を実現するロードマップを描いている。
 
海外では中国が技術面で追い上げている。中国国内で宇宙太陽光発電の実験棟が建設されており、中国空間技術研究院は25年までに100キロワット級の送電実験を実施し、50年までに商用化する計画だ。A・T・カーニーの石田真康プリンシパルは「中国は安全保障のほか、エネルギー自給の観点から開発を進めている」と分析する。
 

宇宙で発電、商用化にはハードル

ただ、宇宙太陽光発電の商用化への道のりは険しい。地上に直径4キロメートルほどの受電アンテナを置く必要があるほか、宇宙には2キロメートル四方の衛星を打ち上げる必要がある。宇宙航空研究開発機構JAXA)の過去の試算では1兆2000億円の総投資額が必要で、現在ではこれをさらに上回る金額が必要だとの見方が強い。
 
国内企業は足元で工場のIoT化につながるマイクロ波の無線送電技術を開発しながら知見を蓄える。宇宙太陽光発電に詳しい京都大学の篠原真毅教授は「マイクロ波無線送電の技術を民間で開発し、プレーヤーを増やしていくことが重要だ」と指摘する。

 
TDK無人搬送車向けのワイヤレス給電システムを開発した

11年にシャープがスマホに採用

無線給電技術は現在、主にスマホで実用化されている。11年にシャープが「アクオス」ブランドから世界初の対応機種を発売。その後、15年に韓国サムスン電子が「ギャラクシー」で展開したことから普及が一挙に加速した。
 
スマホ向けの国際規格となっているのは「Qi」。「エアフューエルリゾナント」など別の規格も存在するが、米アップルが「Qi」を「iPhone」で採用したことがスタンダード化の決め手となった。
 
矢野経済研究所は19年の無線給電の世界市場が2197億円になると予測する。23年には1.6倍の3590億円に拡大するもようだ。足元ではスマホなど小型電子機器での利用がほとんどを占めるが、次なる主戦場と見られているのが電気自動車(EV)で、20年以降に本格的に市場が立ち上がると見られている。
 
自宅の駐車場や路面に電力を送る給電システムを組み込めば、ドライバーはその上にEVを止めるだけで済む。EV普及の妨げの一因にもなっていたケーブルによる充電の手間を省けることから、早期の普及が期待されている。
 
EVにおける無線給電の規格争いは米ワイトリシティと米クアルコムが主導してきた。19年にワイトリシティがクアルコムから無線給電に関する技術や知的財産を買収したことから、ワイトリシティが業界のスタンダードとなる可能性が高い。ワイトリシティはトヨタ自動車TDK、ダイヘンなど日本の大手企業とも組んでいる。
 
スマホやEV以外に工場で稼働する搬送車両など産業用途で普及すれば、無線給電の市場は一気に花開きそうだ。
 
(企業報道部 杜師康佑、国際部 志賀優一)
 

AI取締り

*[ウェブ進化論]税金の話。
規制とか監査とかの話を聞くたびに「これってすごいコストだな」と反射的に思う人は多いのではないだろうか。
税金関係もその一つ。
「そこ」に携わっている人の苦労がしのばれる、と同時にAIで劇的に省力化が期待できるだろう。
いろんな分野がこれから自動化され、一説には「週に3時間だけ働く日常」になるという。摘発とか規制とか許認可とか、正義感を以ってでしかやれない仕事は優先して自動化を検討するべきだと思う。
公務員系の仕事はすべてが「公務」なわけで、こうした仕事の削減が長期的な目標になるはずだが「そこ」で食べている人がいる限りは、激変は緩和して「そろそろ」と進めていくしかないのが日本の特徴だ。
それにしても「あと出しじゃんけん」の日本の税制はため息が出るほど複雑で、とても理解しきれない。まずはこれの整理から入るべきだと思うがそれも政治に期待できるかどうか…
日本の閉塞感とはそんなところにあるのだと思う。
 

富裕層の“行き過ぎ”相続節税に国税庁が「待った!」

 

12/5(木) 9:30配信

 

 2015年1月に施行された相続税増税。富裕層を中心にさまざまな節税対策も行われるが、“行き過ぎ”節税策に国税当局が「待った」を掛けている。【週刊エコノミスト編集部】

◇相続したマンションの価値は?

北海道や東京都に住む相続人3人が、札幌南税務署長の更正処分(納税額の修正)を不服として処分の取り消しなどを訴えた裁判で、東京地裁は今年8月、相続人側の主張を棄却した。争点は、相続人が相続した東京都杉並区や川崎市のマンション計2棟の価値を、いくらと評価するかという点だ。

判決などによると、札幌市に住む会社経営者の男性は09年1月、杉並区の賃貸マンション1棟(44戸)を約8億3700万円で、同12月には川崎市の賃貸マンション1棟(39戸)を約5億5000万円で購入。男性は12年6月に死亡し、相続人3人は13年3月、相続税を申告した。

相続税は、亡くなった人の財産から、借金などの債務と葬儀費用を引いた金額のうち、基礎控除額を超えた分に課税される。相続人3人は、杉並区のマンションを約2億円、川崎市のマンションは約1億3400万円と評価して申告。一方、会社経営者はマンション購入資金として10億円超を銀行などから借り入れていた。

こうした点を考慮し、相続人は相続税を「ゼロ」として申告した。しかし、国税側は16年4月、杉並区のマンションを約7億5400万円、川崎市のマンションを約5億1900万円とする鑑定評価を基に、相続人3人の相続税額を約2億8700万円と修正。約4300万円の過少申告加算税も課した。

◇「伝家の宝刀」を抜く

相続税の申告に当たり、相続財産をいくらと評価すればいいのか。国税庁は「財産評価基本通達」で、土地や建物、株式などの評価方法を細かく定めている。土地は国税庁の発表する路線価を基に、建物は固定資産税評価額を基に計算することが原則。相続人も基本通達に沿ってマンション2棟を評価し、相続税を申告した。

路線価はそもそも、相続や贈与に伴って納税者の負担が重くなり過ぎないよう、国土交通省が発表する公示地価の8割の水準に設定されている。また、建物が借家の場合、借家権が付く分だけ評価額を30%引き下げたりもする。実勢価格に比べて低くなる基本通達の評価方法に従って、相続人は相続財産を評価した。

だが、国税庁は、申告されたマンション2棟の相続税評価額と、時価との間に「著しい乖離(かいり)」があることを問題視。基本通達の評価方法を適用すれば、納税者の税負担の公平を著しく害する「特別な事情」に当たるとして、別の方法による財産評価を例外的に認めた基本通達「6項」の適用という“伝家の宝刀”を抜いた。

相続税法は相続財産の評価の原則を「時価」としているが、具体的な評価方法までは定めていない。その「時価」を評価するルールとなっているのが基本通達だ。相続税申告の実務で現在まで定着している根底には、「6項」の適用を乱発しないことで国税当局と納税者の間の信頼関係が築かれた側面もある。

それでも、国税側はまさに今回、「6項」を適用した。税理士法人タクトコンサルティング情報企画室の遠藤純一課長は「判決によれば、経営者が借り入れた銀行の稟議(りんぎ)書に『相続対策のため不動産購入を計画』などと書かれている。国税側は不動産の評価額の乖離だけでなく、節税策が行き過ぎと判断したのでは」と話す。

◇不明確な基準

しかし、「6項」の適用は増える傾向にありそうだ。相続増税後、国税側が相続税評価額と時価との「著しい乖離」に神経をとがらせていたことがうかがえる資料がある。東京国税局が15年7月、相続税など資産税の担当者向けに配布した研修資料には、基本通達の6項を適用するための四つの条件が示されていた。(1)基本通達の評価方法を形式的に適用する合理性の欠如、(2)基本通達に定めた評価方法のほかに合理的な評価方法が存在、(3)基本通達の評価方法による評価額と、他の合理的な評価方法による評価額との間に著しい乖離が存在、(4)著しい乖離が生じたことに納税者の行為が介在していること--だ。

国税側はまさに今回、こうした4条件を当てはめて、相続税の過少申告を指摘。東京地裁判決も、こうした国税側の主張を全面的に支持する結果となった。しかし、相続人の代理人を務める増田英敏弁護士は「これでは、いつ誰が(国税に)狙われるか分からなくなる」と憤る。「6項」が恣意(しい)的に適用されかねないためだ。

何を持って「著しい乖離」とするか、その基準が明確でなく、納税者に混乱を与えかねない。同じような条件の他の納税者にも6項が本当に適用されているのか、納税者に不信感も抱かせる。そもそも、基本通達の評価方法に穴があるのであれば、基本通達自体を見直すべきではないか--。

相続人は判決を不服として東京高裁に控訴したが、判決の余波は不動産市場にも及ぶ。税理士法人大和パートナーズの加賀光義代表社員は「相続税対策として販売されることも多かった投資用不動産市場では、今回の判決で多少のブレーキがかかるのでは」と話す。

週刊エコノミスト12月10日号から)

 

Measure
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好きの楽しみ

*[趣味]スポーツ音痴。
街の居酒屋でそれこそ「口角泡を飛ばして」ラグビーや野球などスポーツの話をしている人がいる。
特に親しい人が、そういう風になっている時には黙って「へぇー」と思いながら聞いている。
まったくルールすら知らない自分などがヘタに質問するのも憚られるほど詳しい人もとても多い。
「日本のパスワークが尋常でなくってさ」とかそれに対して「いやいや、南アフリカ戦とはわけが違うよ」とか聞くと、すごいことを分析して楽しんでいるなぁとひたすら感心してしまう。
 
そして話している人たちはお互いの「共通の理解」を得ると盛り上がっているし、また違う意見を聞くと「ふむふむなるほど」と尊重したりもしている。
過去の記録や選手のプロフィールなんかにも実に詳しい。
まあとっても楽しそうだ。
 
スポーツ(特に野球とか)ってこんなにも世間に愛されているんだなぁとしみじみ思う。
居酒屋でのそんな時間の使い方。
そしてそういう時間の中にいる自分はふと、自分て(そういう楽しみを知らない)ちょっとかわいそうな奴なのかもしれないと思うのだった。