藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

中間層の消失。

アメリカと言えば自動車。
20世紀の繁栄の象徴だった。

覇者の驕り―自動車・男たちの産業史〈上〉

覇者の驕り―自動車・男たちの産業史〈上〉

ハルバースタムは、覇者の"その後"をピタリと予言していたわけである。
そして、全米自動車労組(UAW)。
これもまた「強いアメリカ」の労働者の象徴だった。

UAWは強い結束力と強硬な交渉姿勢で、会社側から厚待遇を引き出してきた。工場労働者を中心とする組合員の賃金は基本給だけで時給30ドル、福利厚生も含めると時給50ドル強。年収では約10万ドル(770万円)に達する計算だ。

産業そのものの凋落は、当然こうした部分にしわ寄せが来る。
この時給50ドルの相場が「14ドル」にまで落ちているという。
一日八時間、週五日働きづめで、年収は2.7万ドル(1$=80円換算で216万円)。
米政府の定義する貧困層の年収170万円を少し上回るレベルである。
もうそこまで現実が来ており、「ミドルクラスは消失しようとしている」。

貧富の二極化、はここ数年盛んに話題になるが、その実態は中間層がいなくなり「下流へ」と流れていくことを意味しているようである。
オバマ氏の40兆円に上る景気(雇用)対策は、財源を求めて迷走しているが、この「消え行く莫大な層」に対して、税収その他のキャッシュで立ち向かうことは難しいのではないか、と直感する。
『消費が経済を支える』という仕組みや価値観を変える時期がいよいよ迫っているのだろう。

米国を待ち受ける「時給14ドル」の日常 (NY特急便) 米州総局・小高航
14日のダウ工業株30種平均は3日続伸した。独仏とギリシャの首脳が電話会談し「ギリシャは将来もユーロ圏」と確認。欧州危機への過度な悲観が和らいだ。

デトロイト中心部。米ゼネラル・モーターズ(GM)の本社ビルの目の前に、ジェファーソン通りという幹線道路が走っている。

13日夜、片側5車線の道の真ん中に、車イスに乗って紙コップを宙に掲げる黒人男性の姿があった。信号で止まった車から小銭をもらう算段だ。デトロイトで物ごいの姿は決して珍しくないが、車イスの両脇を車が猛スピードで走り抜ける光景はやはり異様だ。

米商務省は13日、米国の貧困層(4人家族で年収2万2300ドル以下=約170万円)が4600万人に達したと発表した。統計がある過去52年で最多。世界最大の経済大国で、7人弱に1人が貧困層と定義されたことに驚きが広がった。ただ「貧困予備軍」も含めると実態はより深刻だ。

ジェファーソン通りをGM本社から数分走ると、全米自動車労組(UAW)の本部ビルがある。メーカー側との4年に1度の労使交渉の期限を14日に控え、深夜でも窓から明かりが漏れる。

このビルは通称「ソリダリティ・ハウス」と呼ばれる。直訳すると「一致団結の家」。UAWは強い結束力と強硬な交渉姿勢で、会社側から厚待遇を引き出してきた。工場労働者を中心とする組合員の賃金は基本給だけで時給30ドル、福利厚生も含めると時給50ドル強。年収では約10万ドル(770万円)に達する計算だ。

この豊かなミドルクラス(中流階級)が大量消費などを通じ、米経済の屋台骨を支えてきた。ところが、最近はミドルクラスが消えつつある。

UAW内部では、「ティア2」(第2階級)と呼ばれる組合員が急増している。07年以降、新規に採用された従業員を指し、同じ仕事をしながらも既存従業員とは異なる賃金体系を適用される。時給はわずか14ドル。1日8時間、週5日働き続けても、年収は約2万7000ドル。「貧困層」をわずかに上回る水準だ。

ミドルクラスの衰退は米国民の消費力を奪い、消費の低迷は企業の雇用創出力を奪う。オバマ大統領が先週発表した4500億ドル規模の雇用対策は、この悪循環を断ち切る狙いだが、富裕層への増税など財源の確保を巡り早くも議会の対立が起きている。

ジェファーソン通りをUAW本部からさらに数分進むと、湖畔にヨットが浮かぶ高級住宅街が突然現れる。貧困街から高級住宅街に急変する通りの風景は、「ミドル」不在の米国を象徴するようだ。