藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

ホワイトカラーエグゼンプション(適用除外)。

そういえば、前安倍政権の時に聞いた「解雇特区」が再浮上しているという。
いわば労基法無視の「雇い手と働き手の自由契約」を認める内容だが、そもそもどうしてこの試みが「成長政略の柱」なのかが問題である。

労働者保護を念頭に、戦後六十年かけて編み上げてきた今の法律が、時代の要請に合わなくなってきたのではないか。

日本は、これからの超高齢化社会を前に、再び「雇用ルールと企業の成長」という問題にあたらしいルールを作らねばならない時期に来ているのだろう。
世界一と言われる労働者の保護を規定する労働法と、現実に終身雇用や正規雇用や非正規雇用を抱える企業の実情はかなりかい離している。

「解雇特区」と聞くと何やら突拍子もない聞こえだが、「柔軟な雇用契約と従業者の保護」について、十把一からげのルールではなく「労使の合意」をもっとリアルに反映する「実態に即した規律作り」が必要なのは、多くの経営者が口にしている話題である。

企業が国際競争力を持って強くなることと、
働く人を保護すること、はそもそも関連させるべき問題ではなく、企業の経営の柔軟性を奪うような特殊なルールはお門違いではないかと思う。

経営戦略に従う組織、に準じて労働の配置が決まってくる。
雇用の維持とか保護とか条件についての規定は、そうした「経営戦略とは別の規定」として運用されるべきではないだろうか。

「解雇特区」は、そうした様々な矛盾の象徴として苦し紛れに登場した「あだ花」に見えて仕方ない。
日本の雇用ルールも、こうしたことを機に時代に即したものになるようにしたいものである。

「解雇しやすい特区」検討 秋の臨時国会に法案提出へ
【山本知弘、清井聡】政府は企業が従業員を解雇しやすい「特区」をつくる検討に入った。労働時間を規制せず、残業代をゼロにすることも認める。秋の臨時国会に出す国家戦略特区関連法案に盛り込む。働かせ方の自由度を広げてベンチャーの起業や海外企業の進出を促す狙いだが、実現すれば働き手を守る仕組みは大きく後退する。

特区は安倍政権がすすめる成長戦略の柱の一つ。20日の産業競争力会議の課題別会合で、安倍晋三首相は「国家戦略特区は規制改革の突破口だ。実現する方向で検討してほしい」と発言。田村憲久厚生労働相に検討を指示した。

特区で導入する解雇ルールや労働時間規制の緩和は、特区内にある開業5年以内の事業所や、外国人労働者が3割以上いる事業所が対象だ。

今の解雇ルールでは、やむをえない事情がなければ、経営者は従業員を自由に解雇できない。特区ではこれを改め、働き手と企業との契約を優先させる。例えば、「遅刻をすれば解雇」といった条件で契約し、実際に遅刻をすると解雇できる。立場の弱い働き手が、不利な条件を受け入れ、解雇されやすくなりかねない。

また、今の労働時間の規制は原則1日8時間で、それを超える場合に労使の協定が必要だ。特区では、一定の年収がある場合にすべての規制をなくし、深夜や休日にどれだけ働いても割増賃金を払わないことを認める。働き手が希望した場合に限るとの条件をつける。

こうした制度は、「ホワイトカラー・エグゼンプション」と呼ばれ、第1次安倍政権でも検討されたが、「残業代ゼロ法案」と批判を浴び、断念した経緯がある。

外国人労働者の多い事業所では、有期契約の労働者を続けて働かせやすくする。今年4月の法改正で、短期の契約を繰り返す契約社員やパートが5年を超えて同じ職場で働いた場合、正社員のように無期契約で働けるようになった。特区ではこのルールが適用されないことを認める。

厚労省は首相の指示を受け、特区構想実現に向けた検討作業を始めた。秋の臨時国会に法案提出を間に合わせるため、政府は実現性を見極めたうえ、10月中旬にも特区の地域を選ぶ方向だ。東京や大阪、名古屋などの都市部が対象になると見られている。

特区は、働き手の環境を守らせるルールである労働基準法や労働契約法をゆがませる。労働条件の基準を切り下げることになる。

■雇用に関する特区の概要

(1)解雇ルール 入社時に契約した解雇条件にあえば、どんな解雇でも認められるようにする。
(2)労働時間 一定の年収がある場合など、労働時間の規制がなくなり、残業代が出なくなる。休日や深夜労働の割増賃金もない。
(3)有期雇用 短期契約を繰り返す労働者が、5年超働いても無期転換できなくする契約を認める。
※開業後5年以内の事業所は(1)(2)。外国人労働者の比率が3割以上の事業所は(1)〜(3)