藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

人生の突き抜け方。


唐突ながら、月に400時間働いたことがあるだろうか。
別に仕事でなくともいい。
学生さんなら勉強、でもいい。


労基法もへったくれもないが、四十代までに一度この「マンスリー400h」を体感しておいた方がいい、というのが自分の意見である。
そう思ったのは以下の報道。
「最高」と言われたレストランが働き過ぎで休業するという。


スペインの有名レストランが休業宣言。

「1日15時間労働を続けてきて疲労困憊(こんぱい)したと述べた」


15×30=450。
二日休んで420時間。
まあそんな見当である。


そしてまた料理人は勤勉である。
特に、まともな料理人は。
特に良心的な価格の料理人は。


東京だと一人当たり二万円以上する高級店のベルトと、
まあ高級だけれども一万円前後の店、あたりにかなり深い溝がある、と感じる。


どうせ食べるのなら、少しでも良いものを、と思いここ二年ほどはなるたけ「新しいお店」にチャレンジしている。

いい店の条件。

中には一人当たり五万円以上するようなお店もある。
そんな高級店は、概して酒の値段も高く、食材も希少で、また店の内装や器などにも凝っている。


だが「そういう良さ」ではないいい店の話。

冒頭の「一日15時間の世界」にあると思う。

自分の知る限り、良い料理人はすべからく勤勉である。
エンジニアだって勤勉だと思うが、割と仕事に緩急があり、延々と続く労働、というものでもない。
しかし料理人は休まない。
一年を通し。


大体、良い料理人の店は月曜から土曜まで営業している。
ラストオーダーは早くて夜10時。
頑張るお店など深夜の二時くらいまで明けている。
当然、店の片づけが終わって帰宅するのは丑三つ時になる。
シェフが眠るのは朝方だろう。


そしてさらに頑張る店は平日はランチも提供していたりする。
すると仕込みは午前中から。
睡眠時間は四-五時間がやっとだろう。



そして良い料理人はさらに日曜日に「来週の仕込み」をしていたりする。
あるいは、レシピを考えたり。
唯一の休みである盆暮れには、「おせち」とか特別メニューをテイクアウトすることなども考えたりしている。
で、休みの日には最低でも「よその店」に研究に行ったりしている。


先日、ある和食で頑張る店の主人(三十路半ば)に聞いたところ、「この間時間つけてみたら、月450時間仕事してました」と平然という。
先週の土日は二昼夜かけて、アユを煮ていたそうである。
頭が下がる。

思いっきりやること。

飲食店はあまたあり、多くの店がオープンし、また多くが消えてゆく。
愚直でも「残るものと消えるもの」の差は努力の時間である。


四六時中、メニューや食材のことを考え、そしてそれを「義務」とは露とも思わない。

まるで自らに賜った天職だ、といわんばかりに迷いがない。


それでいて、毎日の地道な仕入や、仕込みや、店の掃除や、客への挨拶なども欠かさない。

仕事に明け暮れ、摩耗することを批判する向きもあろうが、どこか「ある分野」で一人前になろうというなら、自分自身で「月400時間」を意識してみてはどうだろうか。


きっとその先に何かが開けていると思うのだが。
(その一)


(共同通信より)

疲れ果てた! 世界一のレストランが2年間休業 スペイン


「エル・ブジ」のシェフ、フェラン・アドリア氏=2004年1月(AP) 「世界で最も予約が取りにくいレストラン」と呼ばれるスペインの著名レストラン「エル・ブジ」は26日声明を発表し、シェフらの休養のため2012〜13年の2年間、一時閉店すると述べた。

 声明によると、2年間の充電期間で新たな食材やメニューを研究し14年に再オープンする予定。この日、マドリードで会見したシェフのフェラン・アドリア氏は、1日15時間労働を続けてきて疲労困憊(こんぱい)したと述べた上で「14年に再開するときは、今とは違う店になると思う」と意欲を見せた。10年は6〜12月に営業、11年の営業期間は今年9月に発表する。

 バルセロナ近くにあるエル・ブジは、イタリアのミネラルウオーター・メーカー、サンペレグリノが後援する「世界のベスト・レストラン50」で2009年まで4年連続世界一となった。(共同)